電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

NHK-Eテレ「100分de名著」の2月はデュマ『モンテ・クリスト伯』~佐藤賢一

2013年02月13日 06時05分24秒 | 読書
ふだんテレビを見ない生活をしているものですから、教育テレビがいつ頃「Eテレ」などという妙ちきりんな名前に変わったのか、とんと気づきませんでしたが、さすがに内容は面白そうな番組をときおり見かけます。たまたま書店で、NHKテレビテキストに「100分de名著」なるシリーズがあり、この2月は佐藤賢一さんがデュマの『モンテ・クリスト伯』を取り上げるということを知りました。

当方、『モンテ・クリスト伯』は長年の愛読書(*1)でありますし、父デュマ将軍を描いた佐藤賢一さんの『黒い悪魔』を、先ごろ面白く読んだばかり(*2)です。毎週水曜日の午後11時から11時25分までという放送時間は、早朝に起床することが必要な当方の生活スタイルからはいささか無理があります。でも、再放送(5:30~5:55)および再々放送(0:25~0:50)ならば見ることができそうです。たまに興味を持ったテレビ番組はおもしろいことが多いので、これは楽しみです。

(*1):デュマ『モンテ・クリスト伯』を読む~「電網郊外散歩道」連載全14回
  ~(1), (2), (3), (4), (5), (6), (7), (8), (9), (10), (11), (12), (13),(14)
(*2):佐藤賢一『黒い悪魔』を読む~「電網郊外散歩道」2012年12月
コメント

「手帳甲子園」の報道に高校の生徒手帳の一件を思い出す

2013年02月12日 06時03分02秒 | 手帳文具書斎
2月1日付けの地元紙・山形新聞に、中高対象の「第1回手帳甲子園」に鶴岡中央高校が特別貢献校に選ばれたという報道が載りました。能率手帳プランナーズがビジネス手帳を基に中高生向けの「能率手帳スコラ」という製品を開発、これを採用している学校の活用方法などを表彰するのが趣旨だそうですが、実はこの製品化の原点に、同校が関わっていたことが評価されたとのことです。

今をさること数十年前、私がまだ高校生だった頃に、生徒手帳(*1)というものを渡されました。掌にすっぽりと入るような小型の冊子には、校歌や応援歌、生徒心得や欠席・遅刻・早退に関わる内規などがびっしりと印刷されており、手帳としての機能は見開き2頁で1ヶ月の月間予定表と若干の罫線メモページ、それに授業時間割表だけというものでした。これが、生まれて初めて持った「手帳」です。

高校生の年間スケジュールなどというものは、中間テストや期末テストなどの予定とか、高校総体などの各種大会日程とか、毎年恒例のものばかりですが、実はメモしておくべき事項はけっこうあるものです。春と秋に改定される列車の時刻表、担任や友人の連絡先、定期テストや実力テストの時間割、模擬試験の日程、日々の宿題の覚えや話題にのぼった書籍・レコードの名前など、どうしても記入するページが不足します。



そこで、担任に提案しました。「思い切って内規などを削り、書き込めるページを増やしてほしい。」すると、話は担任から生徒指導担当で生徒手帳の採用担当の先生に回り、「判のサイズが一回り大きいタイプを選ぶなどの工夫はできようが、予算の問題もあって、すぐに変更は難しい。」との結論でした。やりとりの中で、FM誌からひろったFM番組の録音予定もメモしたい、などとポロッともらしたりしたものですから、本音が見透かされた面もあったかもしれません(^o^)/



次の写真は、生徒手帳にはさんであった仙台市の略図です。たぶん、市電の系統をメモしたものだと思います。



結局、大学に入り、大学生協で、能率手帳(*2)を基にした学生手帳を使うようになって個人的には一段落しましたが、同じようなことをずっと考えつづけていた高校の先生がいたことに、驚きました。

では、その「能率手帳スコラ」とはいかなるものか?興味津々で「手帳甲子園」で検索し、ウェブサイト(*3)で確認してみると、なんとB6判でバーチカルタイプのウィークリーページを持ち、時間刻みのスケジュールや学習時間の記録など、目標管理を眼目とする当世風のもののようです。なるほど、数十年前の生徒手帳とは、考え方も機能もまるで違います。思わず遠い日を懐かしみ、昔の生徒手帳を引っ張り出してしまいました(^o^)/

まだそんなものを持っているのかと皆様に呆れられそうですが(^o^;)>poripori

(*1):生徒手帳:生徒手帳の「これから」をご提案し続けます
(*2):能率手帳について:手帳シリーズ~JMAM
(*3):(株)能率手帳プランナーズ:手帳甲子園

コメント (9)

パイロットの「コクーン」万年筆を黒インク専用にする

2013年02月11日 06時03分49秒 | 手帳文具書斎
過日、行きつけの文具店で、文具フリーマガジン「Bun2」をもらってきたついでに、パイロットの万年筆「コクーン」シリーズの展示を見つけ、青軸を一本、購入して来ました。例によって、定価が3,150円のところを二割引で2,520円です。









外観はこんな感じです。一見して、キャップをはめ合わせるところの段差がきつく感じられますが、実際の使用感は?

ペン先はステンレス?製の中字(M)で、プレラ青軸と同じです。線の太さや書きやすさの程度は十分に承知しております。キャップと尻軸は立派な見かけで、とても三千円程度の万年筆とは思えないデザインです。ただし、首軸はなんだかプラスチックが安っぽく見え、コストダウンが見え見えで、もう少しなんとかならなかったものかと感じます。インク・カートリッジ交換の際に、毎回幻滅するかもしれませんが、それはもしかすると、高級品に誘導しようという同社の意図的・戦略的なものかもしれません(^o^)/



万年筆の握り方にも関わりますが、どうもキャップのはめ合わせ部の段差がきつく、このあたりを握るクセのある人には使いにくい万年筆かもしれません。次の写真は、私の普段の握り方(パイロットのカスタム)の場合と比較したものです。握る位置が、ばっちり段差に当たってしまいます。





「コクーン」の場合、段差よりも上(尻軸)のほうを握るか、



あるいはずっと下(首軸)のほうを握るかすれば、たぶん大丈夫でしょう。そのための、握り部の色違い塗装なのかもしれません。

新品ですし、もともとインクフローの良いパイロットの黒インクですので、インクフローはスムーズです。これは黒インク専用で、インク色を交換することはありませんので、コンバータは使わず、カートリッジで通すことにします。

プレラ透明軸の青(F)、プレラ青軸(M)に続き、再び青軸のコクーンです。なかなか落ち着いた、良い青色です。デザイン優先の製品は使いにくいものが多いと感じるのですが、当方にとっては、まずは許容範囲と言えます。

コメント (4)

佐伯泰英『木槿ノ賦~居眠り磐音江戸双紙(42)』を読む

2013年02月10日 06時05分23秒 | -佐伯泰英
昨年12月と今年の1月と、2ヶ月連続して刊行された佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙』シリーズのうち、最新刊の『木槿ノ賦』を読みました。木槿はムクゲと読ませているようで、晩夏に咲く庭木で、小型の芙蓉のような花が、朝に咲き、夕べには落ちる、あれでしょうか。

第1章:「若武者」。これは、利次郎でも辰平でもありません。なんと、継嗣のない藩主・福坂実高が養子に迎えた福坂俊次のことでした。なるほど、これが昼行灯と評される国家老・坂崎正睦の秘策・切り札だったわけですね。しかも、すでに上様のお目通りも実現して、名実共に継嗣として認められたといいます。田沼意次が、よく認めたものです。ふーむ、これなら、実高とお代の方との和解と再会も不可能ではないと見ました。

第2章:「照埜の墓参り」。実高の養子・俊次は、幕府の定めにより、人質として江戸に残らなければなりません。実高は、磐音に師事し、修行するように命じます。むろん俊次は最初からそれを願っていたわけですが。坂崎正睦と照埜は、国元に帰ることとなります。警護役の若侍もなかなか筋が良いようで、関前藩は剣術の方は人材が豊富なようです。

第3章:「旅立ちの朝」。坂崎正睦と照埜は小梅村を出立します。別れの宴は多士済々、賑やかでしたが、出発の朝はぐっと密やかに。しかし、関前藩の次期藩主・福坂俊次も見送りに来ておりました。陸路の途中、鎌倉の縁切寺に立ち寄ったのは、お代の方との対面の場を準備したためでしょう。作者は、人情で盛り上げようとしているようです。もちろん、多少の攻防戦は用意されておりますが。

第4章:「俄の宵」。出来の良い若者たちがいれば相対的に不出来な若者もいるというのは、自然なことです。竹村武左衛門の息子の修太郎は、母親の過保護がたたったか、どうも思わしくありません。さらに、新たな襲撃者は、短弓に南蛮渡りの猛毒を塗ってあるとか。物騒な話です。加えて磐音は、短慮を絵に描いたような佐野善左衛門の、田沼意次に対するストレス発散のお相手も勤め、カウンセラーの役割も果たします。遠く山形では、奈緒が前田屋内蔵助の介護をする事態も伝えられ、心配事は絶えません。

第5章:「短刀の謎」。尚武館佐々木道場の改築の際に、地中から出土した二振りの古刀のうち、短刀の研ぎが進みます。そこには、葵の御紋とともに、「三河国佐々木国為代々用命 家康」という言葉が刻まれておりました。武家地の拝領屋敷といい、徳川家と佐々木家との深い関わりとともに、何らかの秘命を示唆します。それはそうと、起倒流鈴木清兵衛道場の師範・池内某が、関前藩継嗣・福坂俊次を襲撃させようという密談を、弥助が聞いてしまいます。なんとか襲撃の舟は撃退したものの、藤子滋助が負傷し、霧子が毒矢で深手を負ってしまいます。許せぬ所行と、起倒流鈴木道場に出向き、白河藩の松平定信ら諸大名の居並ぶ前で、主を悶絶させたものの、霧子の生死は危うそうです。

若き徳川家基が急逝するのは歴史的事実ですから、これはいたしかたないものの、佐々木玲圓夫妻を殉死させた作者です。ここで霧子さんを死なせることは充分にありえます。『水滸伝』みたいに、登場人物を次々と死なせる心づもりじゃなかろうなと、先読みしすぎの読者は、つい警戒してしまいます(^o^)/



意外だったのは、木下一郎太の伴侶となった菊乃さんがお酒が好きなこと。まさか、それで離縁になったわけではないでしょうが、全国の酒蔵にとっては心強い味方でしょう。女性がみな甘党とは限りません。男性がみな辛党とは限らないのと同様です。

もう一つ付け加えれば、実高とお代の方の不和は、藩主は隔年で国元へ、正室と継嗣は通年で江戸に暮らさなければならないという幕府の定めた人質制度が背景になっていることはほぼ間違いないことでしょう。単身赴任の経験から言っても、そのことは確かなことです。一般に、愛情は会っている時間に比例し、離れている距離に反比例するものです。これを、当方では「愛情に関するnarkejpの法則」と呼んでおります(^o^)/

コメント

ストコフスキーによる管弦楽版でラヴェル「道化師の朝の歌」を聴く

2013年02月09日 06時05分26秒 | -オーケストラ
レオポルド・ストコフスキーといえば、映画「ファンタジア」や「オーケストラの少女」に登場する伝説の指揮者でした。バッハの「トッカータとフーガ」等をオーケストラ用に編曲し、録音などにも工夫を凝らしていた関係か、当時の評論家先生たちの評判は、「聴かせ上手だけれどやりすぎ感も否めない」というようなものだったと記憶しています。今風に言えば「イロモノ」扱いに近かったのでは。

1970年代の前半は、録音年代の古いステレオ初期のものを中心に、廉価盤LPが次々に発売されていた時代で、中にはストラヴィンスキーの「火の鳥・ペトルーシュカ」など、ストコフスキー指揮によるものが含まれており、ずいぶん楽しみましたし、ホルストの「惑星」などは、すでに記事(*1)にしております。でも、ラヴェルやドビュッシーなどの録音にはついに出会うことなしに現在に至りました。

著作(隣接)権保護期間が過ぎて、パブリック・ドメインになったことで、これらの作品を自由に聴くことができる(*2)ようになり、真冬の朝に、管弦楽版のラヴェル「道化師の朝の歌」を聴いております。「のだめカンタービレ」でおなじみのピアノ作品がオーケストラ用に編曲され、ちゃんと鳥のさえずりなどもそれらしく聞こえるようになっており、いや~聴いていて楽しい!こういう録音に自由に接することができることのありがたさを感じます。

そういえば、山形交響楽団の創設名誉指揮者である村川千秋さんは、ストコフスキーに師事したのではなかったかな。意外なご縁もあって、ストコフスキーの録音には今後も注目していきたいと思っております。

(*1):ストコフスキーの「惑星」を聴く~見上げる宇宙と航行する宇宙~「電網郊外散歩道」2011年8月
(*2):クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~リスニングルーム より

コメント

文具フリーマガジン『Bun2』2月号を読む

2013年02月08日 06時05分33秒 | 手帳文具書斎
過日、行きつけの文具店に行き、ステーショナリー・フリーマガジン「Bun2」の2013年2月号をもらって来ました。通巻では第46号になります。今月号の特集は「2013年も文具が熱い!」というタイトルで、「今年注目の文具を紹介」するものです。で、その中身は:

(1) パイロット「コクーン」~スタイリッシュな万年筆が若者に人気
(2) 三菱鉛筆「クルトガ・ラバーグリップ付」「クルトガ替芯」~人気のハイテクシャープが進化
(3) ナカバヤシ「スマレコスタンプ」~スタンプ押して書類をデジタル管理
(4) クツワ「文具エプロンバッグ」~働く女性に向けて開発した収納用品

などが中心になっています。
この中で、個人的に興味があるのが、(4)のクツワの「文具エプロンバッグ」です。文具でなくて、畑で剪定をするときに、剪定ハサミやトップジン・ペーストなどを入れるのに使えるのでは?という、まったく別の発想(^o^)/
別に、働く女性に限定しなくても良かろうに、と思ってしまいます(^o^;)>poripori
当方、色物文具とかデコなんとかというようなジャンルは興味がなく、もっぱら実用性重視ですが、今回は興味をひかれる製品があったので、「当たり」でした。

そうそう、実は特集にあったパイロットの万年筆「コクーン」を一本購入し、黒インク専用としております。

コメント

青系インクの色の好みと減り方

2013年02月07日 06時03分50秒 | 手帳文具書斎
昨年は、万年筆、とくに青系インクを再認識した年でした。それまでは黒インクを主体にしてきましたが、パイロットの色彩雫シリーズ「紺碧」をきっかけに「朝顔」も購入し、金ペンでこそないもののけっこう使いやすい短軸型の万年筆「プレラ」も購入し、愛用しました。最近では、プラチナのブルーブラック・インクカートリッジを購入し、超廉価万年筆プレッピーで試してみましたが、どうも 0.3mmという細さも影響してか、色が薄いと感じます。



個人的な好みで言うと、ブルーブラックはやはりパーカー Quink のブルーブラックに軍配が上がります。「紺碧」と「朝顔」では、どちらとも言えません。それぞれ良い色です。とくに、太めのペンで書く「紺碧」は、細字のときとはまるで違う強い印象を与え、最近はぐっと評価が高くなっております。純粋に色の好みで言えば「朝顔」ですが、インク瓶の中身の減り方からいくと、

パーカーのブルーブラック > 紺碧 > 朝顔

の順になっており、このあたりはたんに好みだけで割り切れるものではなく、使用する万年筆の太さや、使う場面・内容によって筆記量が異なるためでしょう。

コメント (7)

筆記具とノートに関する漠然としたメモ

2013年02月06日 06時02分54秒 | 手帳文具書斎

筆記具とノートがあれば、何とかなることが少なくない。

  • 外出時やミーティング等の際に、筆記具とノートがあれば、なんとか用が足りることが多い。
  • 思考や感情が混乱している時でも、冷静な見方が生まれてくる。
  • 忘れては困ることをすぐに書き留めておくと、後で役立つ。
  • 満足できるほどお金を貯めるのは難しいが、ノートと筆記具は、いやというほど集まってしまう。

だから何だ、というようなしろものですが、だいぶ前に、寝床用のメモ帳になぐり書きしてあった内容です。

ちなみに、寝床用のメモ帳にセットして愛用している三菱ユニのキャップ式パワータンク・スタンダード1.0mm(黒)(*1)ですが、行きつけの文具店の店頭在庫にありましたので、3本ほど確保しました。これで、寝床で思いついたことを仰向けに筆記するスタイルでも、当分は大丈夫でしょう。

(*1):パワータンクを使い切るときはいつもワクワクする~「電網郊外散歩道」2013年1月
コメント

インク補充の楽しさ~日々を淡々と楽しむ

2013年02月05日 06時03分13秒 | 手帳文具書斎
ボールペンを使っていても、インクが全部なくなって使い切ったときには、けっこう「やった!」感があります。新しい替え芯に交換するのは、楽しい作業でもあり、これまでも何度か「ただそれだけ」の記事を書いているほどです。

万年筆の場合も同様で、カートリッジではなくコンバータを使っている場合には、むしろそれ以上に楽しさがあります。インク瓶のふたを開けてペン先を首まで突っ込み、コンバータのつまみを回して目一杯まで吸入し、最後にティッシュペーパーなどで余分のインク汚れを拭き取ります。不器用な人は、これが苦手で、手を汚してしまうから嫌いだと言うかもしれませんが、自分で手入れする道具が身の回りからどんどん姿を消している現在、こういう作業がむしろ楽しいと感じます。



水洗いして乾燥させてあったメイン万年筆(*1)、パイロットのカスタムに、これまでの黒に替えて、同社の色彩雫シリーズの「紺碧」を入れました。細字ではやや頼りない文字色も、かなり太めの中字ではハッキリした印象になります。これまでは、中字で黒では強すぎる印象がありましたが、このくらいならばコントラストの強烈さもだいぶ和らぎます。「紺碧」インクも、長く使い続けている同社のカスタム万年筆とコンビを組むことを喜んでいるかもしれません。

一方で、黒インクのコントラストの高い識別性は格別です。青系のインクの場合は、ある程度の太さが必要ですが、黒ならば逆にある程度は細くても大丈夫のようです。黒インク用の万年筆には、さて何を使おうかと思案中です。

(*1):常用するパイロットの万年筆を水洗いする~「電網郊外散歩道」2012年12月
コメント

佐伯泰英『散華ノ刻~居眠り磐音江戸双紙(41)』を読む

2013年02月04日 06時05分43秒 | -佐伯泰英
前巻では、豊後関前藩の国家老にして坂崎磐音の父親である坂崎正睦が江戸に密行し、江戸家老一派に拉致されたところを救出されるというお話でした。背景にあったのが江戸家老一派の阿片抜け荷であり、さらに背後には田沼意次・意友父子がいるというのですから、ずいぶんとまあ、ご都合主義も甚だしい展開ではありますが、そこはそれ、大江戸エンターテインメントですから(^o^)/

第1章:「睨み合い」。父正睦を救出した磐音は、小梅村の尚武館坂崎道場で弟子たちを指導している毎日です。正睦と速水左近の対談を通じて、一定の目処をつけた上で、懸案解決に向け、磐音は宮戸川の鰻を手土産に、豊後関前藩の江戸屋敷に赴きますが、お代の方の変わりように驚くばかりです。でも、伝えるべき情報はきちんと伝えます。これ、大事。

第2章:「世継ぎ」。磐音は中居半蔵と会い、藩主実高とお代の方夫婦の離間の経緯を告げられます。磐音らが紀州の隠れ里で田沼意次・意知一派の追求をしのいでいたとき、世継ぎのない藩の行く末を思う弱みを突かれ、正室に無断で側室を置いたことが決定的でした。それは、江戸家老・鑓兼参右衛門のたくらみであり、お代の方を籠絡することで藩政の実権を握ろうとするものです。中居半蔵は、国家老・坂崎正睦と会い、反撃の策を練ります。その第一歩は、坂崎正睦がお代の方に対面することでした。

第3章:「堀留の蝮」。組織の職階上は、江戸家老よりも国家老のほうが上位です。このあたりは、本社の専務取締役と支社長との関係のようなものでしょうか。中居半蔵の後任が決まらない物産方の組頭を、国家老の職権で稲葉諒三郎を任命、正式には藩主・実高の上府の際に追認を得ることとして、物産事業はようやく再開されます。深刻な話を中和しようと、武左衛門の放浪のエピソードが挿入されますが、どうもあまり面白くありません。むしろ、物産事業を妨害するやくざ者たちを撃退する利次郎の活躍のほうが面白い(^o^)/

第4章:「祝い着」。紀伊藩剣術指南を藩主直々に命じられた関係で、紀伊、尾張、関前など各藩から尚武館道場に修行に通う者が増加します。縫箔の修行中のおそめは京都に修行に上ることとなり、赤子の祝い着を持参し、小梅村を訪れます。時の流れは、少年と少女を頼もしい若者に変えています。一方、弥助と霧子の調べにより、鑓兼参右衛門と田沼一派との密談内容が判明し、坂崎正睦は速水左近、中居半蔵らと連携をとりながら、藩主・実高の名代として藩邸に乗り込むこととなります。もちろん、磐音は実高の意を体し、護衛として随行します。

第5章:「再びの悲劇」。この章は、江戸屋敷に巣食う鑓兼一派と対決し、勝利を収め、事態の収拾に苦慮する内容ですが、子を持つ・持たぬが自由ではなかった時代が舞台とはいえ、正室お代の方がいささか哀れです。

ところで、国家老がこんなに長期間国元を空けていて、関前藩の行政は大丈夫なのでしょうか。藩主がいるわけだから、最終決裁は大丈夫なのでしょうが、まさか藩主が自ら実務を取り仕切るわけはないので、組織上の代理、補佐役の存在が注目されるところです。

コメント

窓に激突し羽根を痛めたヤマドリに社会保障制度の歴史を思う

2013年02月03日 06時03分37秒 | 健康
過日、某所の窓ガラスに激突し、羽根を痛めたヤマドリの写真を掲載しましたが、その後どうなったのだろうかと、気になっておりました。先日、再び某所で「あのヤマドリは、その後どうなりましたか」と尋ねたところ、その後は意識を回復したらしく、雪の中を歩いていったらしい足跡が、山の方へ向かって続いていたとのことでした。ふーむ、まずは息を吹き返したようで良かったけれど、その様子では、大自然の厳しい寒さの中で、生き延びるのは難しいのではないか。少なくとも、痛めた羽根が回復し、自力で飛んで外敵から身を守り、餌をとることができるようになるまでの期間は、誰かの世話にならなければいけないのではないか。

そういえば、病気や怪我をした動物で、生き長らえることができるのは、人間だけだと聞いたことがあります。群れを作り、一定の社会生活を営む野生動物も、病み傷ついた同類を助ける社会制度を持つものはいないのではないか。人間の場合だけが、病み傷ついた同類を助け、回復するのを待つ習性や慣習がある、ということでしょう。映画「レ・ミゼラブル」に描かれたような貧困や苛政の時代から、少しずつ積み重ねられてきたであろう社会保障制度の歩みに、思わず歴史を感じたことでした。

先天的な障がいを持って生まれたり、後から傷病により心身に障がいを持つことになった人々を助け支援する制度の存在は、本人や家族にとっては実に大切なものであり、本来「社会はあなたのことを思っていますよ」というメッセージでもあるはず。たしか、難病に苦しんだ分子生物学者、柳澤桂子さんの本ではなかったかと思いますが、ヒトが障がいを持つようになるのは、必ずしも本人の責任ではない。だとしたら、それは社会全体で支えることが大切だろう、という趣旨でした。この一節は、著者の本などを参考にしつつ分子生物学を学んだ理系人間にとって、目からウロコが落ちる思いでした。私自身が、社会保障というものの本質を理解した一瞬です。ずいぶん遅いといえば遅い、うかつといえばうかつな話です。それでも、遅すぎることはないでしょう。理解した内容は、実に大切なことでした。

コメント (2)

三浦しをん『神去なあなあ日常』を読む

2013年02月02日 06時03分21秒 | 読書
おもしろいという話は聞いておりましたし、書店で人気があるのも承知しておりました。たまたま図書館で単行本を見つけましたので、手に取りました。なるほど、さすがに人気が高いだけあり、おもしろかった。三浦しをん著『神去なあなあ日常』。著者の作品を読むのは『舟を編む』以来で、これで二作目です。

第1章 ヨキという名の男
第2章 神去の神様
第3章 夏は情熱
第4章 燃える山
第5章 神去なあなあ日常

神去村(かむさりむら)とは、三重県中西部、奈良県との県境近くにあると想定された架空の村だそうです。作者の祖父の出身地である、三重県中勢区域を流れる雲出川の上流、旧美杉村がモデルだとのこと。
さらに登場人物が愉快です。
主人公は、平野勇気。横浜育ちで、高校卒業後はフリーター希望でしたが、親の都合と担任の陰謀により、林業に就業することを前提に国が助成金を出している「緑の雇用」制度に勝手に応募され、神去村で働くことになります。
ヨキ:いくら圏外とはいえ、初対面の若者の携帯の電池パックをいきなり捨ててしまうような、野性的でお調子者のパワフル林業マン。本名は飯田与喜。
中村清一:中村林業株式会社の社長であり、山太の父親で祐子の夫。眼光鋭く、進んだ経営感覚と伝統とを調和させている、有能な現場タイプ経営者。
直紀さん:祐子さんの妹。バイク乗りでスピード狂の小学校教師。姉の夫の清一さんを慕っているようですが、年下も嫌いではなさそう(^o^)/
飯田みき:ヨキの妻。強烈に激しくヨキを愛しています。この激しさを受けとめられるのは、たぶんパワフル林業マンだがスーパー適当男のヨキしかいないでしょう(^o^)/

登場人物が、とにかく絶妙におもしろい。村の中にはよくいるタイプの人も登場します。こういう人物造型は、たぶん作家の想像力だけでは無理で、おそらく取材で出会った人たちをデフォルメしたものだろうと思います。
そして、なんといっても迫力満点なのが、伐倒した杉の巨木を村まで一気に落とす場面です。どこが「なあなあ日常」なんじゃ!(^o^)/
ただでさえ豪快な情景なのに、それに乗っていくという設定なのですから、ジェットコースターの比ではありません。摩擦で相当ブレーキはかかっているとはいうものの、かなりのスピードになるはずです。滑走中に幹が回転しないのか、もし少しでも回転したら、乗っている人たちは振り落とされてしまわないのかと心配になります。このあたり、作家の想像力の産物なのか、現実にあることなのか。林業の現場にはとんとうとい者からは、まるで見当もつきません。いちど、林業関係者にきいてみたいものです。

おもしろい。著者の『舟を編む』は、辞書編纂という仕事に着眼した点が成功のポイントだったと思いますが、これは言わば「青春林業小説」というジャンルを開拓したようなもので、いくらでも続編が可能でしょう。と思ったら、本書は文庫化されていて、単行本ではすでに続編が出ているのだそうな。いやはや、いつのまにか時世は進んでいるのですね~(^o^;)>poripori

コメント (2)

お年玉年賀ハガキの当選番号が判明~当選枚数は

2013年02月01日 06時02分23秒 | 手帳文具書斎
平成25年度のお年玉つき年賀ハガキの当選番号が発表されました。うっかり失念しておりましたが、気がついてあわててインターネットで検索、たちどころに結果を得ることができました。このあたりは、ネット社会になってほんとうに便利になったところでしょう。

さて、結果は:

4等:お年玉切手シート  2枚(いずれも70番)

でした。

当選率は約1.1%、などとすぐ計算してしまうのは、理系の習性でしょうか(^o^)/

コメント (2)