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きれいな女たちの舞台裏ー幸田文「流れる」の世界

2013-10-17 09:27:25 | きものの本&本

先日行った「幸田文」展で購入した小説「流れる」。

 

この本、持っているのですが、いかんせん古いので活字が小さい。

 

「活字が大きくきなって読みやすくなりました」に引かれたわけです。

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この人の初期作品、狭いといえば狭い世界を描くのが特徴です。

 

継母との確執、あるいは家事を細かく分解していたり、きもの一着一着へのこだわりと愛着を描いてみたり~。

 

だから、その世界に興味のない場合は読みにくい。

 

15年くらい前には、この作品の芸妓や「女中」と世界にはまったく興味を持てませんでした。きものにも興味なかったし。

 

それでさらさらと流し読み。

先に映画を観たことと「さすがの着こなし杉村春子さん」、

 

今回の展示会をきっかけに改めて読み直してみて、またまた驚きの面白さ

 

(ブログ効果です。ありがとうございます。)

 

この作品、小説とはいえ、幸田さんが実際に置屋に女中奉公をした経験が下地になっています。

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映画では置屋の主人の健気さ、年を取り売れなくなった芸者の哀しさ、きものにかける芸者の心意気といった、まだきれいな面が山田五十鈴、高峰秀子、岡田茉莉子といった女優さんが演じています。

 

ところが小説では、冒頭から物理的な汚さの描写で始まります。

「~ずっと見渡す廊下には綿ぼこりがふわふわしている。鎖を引きずって排泄物を掻きちらしながら犬も出てきたし~」

「あなた、台所汚いの平気?平気でないと勤まらないわよ」

「風呂場」はしばらくは焚いたようすはない汚さである」

映画では「女中」の梨花役田中絹代さんは狂言回しに徹していますが、小説ではさすがにおとなしくしていない梨花さん。

 

玄人の粋筋に素人の目を持って対峙しています。

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「ーーわからないはずはない、と挑んでいくような気になり、どこに置いても自分は強いと、ひそかな得意があった」

この梨花さんが「家政婦は見た」シリーズ的に、芸妓たちのずる賢さ、汚さを辛辣に、しかし、そうしなければならない哀しさを理解しつつ描いていきます。

「静かなのは陰気、ことばのいいのはお高くとまっている、実行力のあるのが図々しい、美貌がいやみ、とかなんだか云う」

「聞いていて、梨花は染香の腹を底まで読もうとしていた。~老残である。けれども梨花にはこの人を憎めない感情があった」

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支度をする山田五十鈴さん。

この人の立居振舞を観るだけでも価値がある映画。

もちろん、辛辣なだけではなく、何気ない動きのなかに現れる芸妓の色気に感服し、自分の「色のない半生」を寂しく思う~。

 

きものに関しても、もちろん情報満載

 

女の美醜談義、島田という髪型はその女の顔の一番いいところを引き出す云々~もう芸妓の世界の裏側、本音が描かれています。

「この世界の人は、着物の値段には変な鈍感さがある。同じ金嵩(かねがさ)でも他のものとの金嵩とは違う。~着物の値段は芸妓を混沌とさせるもののようである」

うーん、これはシロウトの世界でも同じなような~~。

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正月のきものを選ぶ女染香。

幸田さま、露伴ものを一通り書いたあと、これまで書いたものから決別するため、「自分でどんな職業に就けるか」と文筆業を断って、仕事探しをしたそうです。

 

それでも40代を過ぎた身には、3、4か月経っても仕事が見つからず、辛い思いをしたとありました。

 

その結果見つけた女中仕事。それを描いたわけです。

 

この経歴で、40代で、こういう仕事ができる強さ、すごい人ですね。

そうそう、この「蔦の屋」の主人のモデルを「幸田文」展で拝見しました。山田五十鈴さんとはまたタイプの違う細い美人。

 

「女の世界」というと、林真理子さん言うところの「妬み、嫉み、なんとか」という感情が付きまといそうですが、さすがに幸田さま、その辛辣な視線に、そういう濁った感情を感じさせない。

 

それは著者が「(彼女たちと)きちんとした線でたてきっている」からでしょう。

絶妙な距離感

 

女三人いれば、いや人が集まれれば必ず沸き起こるさまざまな感情の渦や嵐、日頃は倹約してもきれいなきものを見れば後先のことも考えず買ってしまう女心~。

 

老いや自分の境遇と向き合う気持ち。

 

それらは「芸妓の世界」に限ったことではありません。

そういう意味でも、この小説は「生きる知恵」満載の優れた女の指南書とも言えそうです。

 

映画と小説、展覧会の立体構成?でした

応援ありがとうございます。

キビシくも楽しい女の世界

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コメント (4)
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