映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「時ひらく」 

2024年05月06日 | 本(その他)

三越!!

 

 

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350年の時を刻む老舗デパート『三越』
楽しいときも、悲しいときも
いつでも、むかえてくれる場所

物語の名手たちが奏でる6つのデパートアンソロジー
文庫オリジナル!

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デパートの、しかも「三越」をテーマとするアンソロジー。

デパートがテーマというのはこれまでもあったような気がしますが、
「三越」に絞るというのが心憎い。

この文庫本の表紙がなるほど見たことのある包装紙の模様というのも洒落ています。
ちなみに我が町札幌にもちゃんと三越はあって、ライオン像もいます♡

 

さて、数あるデパートの中で、なぜ「三越」なのかと言えば、
なんといっても350年の歴史を刻む老舗ということ。
まあ江戸時代の越後屋はともかくとして、
日本初の百貨店として営業を始めたのが1904年(明治37年)、
日本橋に本店新館が竣工したのが1914年(大正3年)とのことで、
何しろ私たち日本人の生活と密着した歴史を感じられる場所なのですね。

それなので、本巻に収められている短編には、
この「時間」を意識したものもあるのです。

 

伊坂幸太郎「Have a nice day!」は、
「三越のライオン像に、誰にも見られずにまたがった者は願いが叶う」
といううわさを信じた少女が、受験をパスしたくて、実行します。
その時、彼女の頭の中に、不可思議な二つの映像が流れる・・・。

その映像の答えがわかるのはなんとその10年後。
それはライオン像が、来たるべき未来に取るべき行動を暗に示しているのだった
・・・と言うSFめいたストーリー。
伊坂幸太郎さんのストーリーなので舞台は仙台の三越ですが、
その屋上に神社があるのもミソなんですね。
ステキな作品でした!

 

恩田陸さん「アニバーサリー」は、三越ゆかりの「モノ」たちが集まって会話を交わします。
地下道の絵巻に描かれている犬、
吹き抜けの所にある巨大天女像、
ライオン像に、パイプオルガンなどなど・・・。
人の世の移り変わりと共にある三越は歴史の生き証人でもあるというわけですね。
巻末の東野圭吾さん「重命る(かさなる)」は、おなじみ湯川教授のシリーズです。
おトク感たっぷり!!

 

執筆者は他に、辻村深月、阿川佐和子、柚木麻子

 

このアンソロジー企画はなかなかイケていました!

「時ひらく」 文春文庫

満足度★★★★☆.5



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