映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ヴィレッジ

2023年04月26日 | 映画(あ行)

息苦しさの果てに

* * * * * * * * * * * *

山あいの集落、霞門村。

片山優(横浜流星)は、ここで生まれ育ち、少年時代には
村の伝統として受け継がれてきた薪能の教室に通っていました。
しかしそんな頃、村にゴミの最終処分場が建設されることになり、
その建設を巡るある事件により、優の暮らしは一変します。

父は犯罪者となり自殺。
周囲の人々からは冷たい視線を投げつけられます。
こんな村からは出て行きたくても、母もすっかり変わり果て、
パチンコ依存症で借金は膨らむばかり。
この借金をどうにかしなければ、出て行くに出て行けません。
そのため優はゴミ処理施設で働くことになり、
仲間からはいじめの標的になっています。

出口のないトンネルに迷い込んだように、
孤独と閉塞感に押しつぶされそうになる優。

しかし、幼馴染みの美咲(黒木華)が東京から戻ったことをきっかけに、
優の周囲は大きく動き出します。

 

優と美咲は心が通い合うようになり、処理場における優の立場も好転していく。
ことはよい方向へ向かっているはずなのに、不安ばかりがこみ上げてくるという、
不思議な感覚に包まれます。

と言うのもそもそも、この処理場では危険な産業廃棄物を闇取引し、地中に埋めていた・・・。
優は借金を返すために、それと知っていてもその作業についていたのです。
このようなことに加担していて、ハッピーエンドに向かうはずがない。

 

この村を見おろす山中にゴミ処理場がそびえ立っており、
まるでこの村を支配しているかのようです。
実際、この処理場でこの村は成り立っているようなもの。
そうした成り立ちも、いかにも不穏・・・。

どうしようもなく生きるのが苦しい優。
母の浪費のためにがんじがらめで逃げ出すこともできない。
こんな暗い青年をも横浜流星さんが
存在感をもちながらきっちりと演じていて、すごいです・・・。

八方塞がりのような周囲の状況の中でも、必死でもがいて、
なんとか少しでも幸せをつかみたいと思う。
けれども・・・。
一体どうすればよかったのだろう。
どの時点で道を間違えたのか・・・。
でもやはり、こうするほかなかったようにも思う。

つかの間、幸せな未来を期待したのは、やはり夢でしかなかったのか・・・。

 

さて、同じく借金のためにやむなくここで働く金髪の青年に奥平大兼さん。
そして、美咲の弟で、若干コミュニケーション障害的な青年に、作間龍斗さん。
これが結構重要な役柄なのですが、よかった。

作間龍斗さんは最近WOWOWのオリジナルドラマ「ながたんと青と」で知ったのですが、
ジャニーズJr、HiHi-jetsの一員であります。
おそらく今後テレビなどで見かけることが多くなるかも知れません。
また推しが一人増えてしまった・・・。

 

<シネマフロンティアにて>

「ヴィレッジ」

2023年/日本/120分

監督・脚本:藤井道人

出演:横浜流星、黒木華、一ノ瀬ワタル、奥平大兼、作間龍斗、中村獅童、古田新太

 

息苦しさ★★★★★

満足度★★★★★



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