では、米国型資本主義とは何か。産経新聞社の田村秀男編集委員はこう述べる。
<米国型資本主義モデルとは、世界最大の債務国米国が日本をはじめとする外部からの資本をニューヨーク・ウォール街に引き寄せることで成り立つ。そのための枠組みはグローバルな金融自由化ばかりではない。株主利益を最優先する企業統治という仕掛けとグローバリゼーションは一体化している。
金融市場の投資尺度は企業財務のうち、株主の持ち分とされる「純資産」、すなわち株主資本に対する利益率である。利益率を高める経営者にはストックオプションなど高額の報酬が約束される半面で、一般の従業員は絶えずリストラの対象にされ、給与は低く抑えられる。そんな金融主導モデルが全産業を覆ってきた>(平成28年11月13日付『産経新聞』)
わかりやすくいえば、「会社は従業員とその家族のものではなく、雇われ社長のものでもなく、株主と投資家のものである」となる。さらに最も効率よく利益を上げられるのは「モノづくり」ではなく、金融商品の開発と売買であり、その自由化を推し進めることが正しいと見なされている。
<このビジネス・モデルはグローバリズムを推進した1990年代の民主党ビル・クリントン政権と2001年発足の共和党ジョージ・W・ブッシュ政権のもとで大成功を収めた。1994年には国内総生産(GDP)の4%余りだった外国資本流入は07年には16%近くまで上昇する間、ウォール街は湧きたった。
世界の余剰資金は住宅市場に流れ込んで住宅相場をつり上げた。住宅の担保価値上昇を受けて、低所得者にも住宅ローンが提供された。多くの家計は値上がり益をあてに借り入れ、消費に励み、景気を押し上げた>が、住宅の値下がりとともに、このバブルははじけた。それがリーマン・ショックである。
リーマン・ショックの原因は「サブプライム住宅ローン」である。
さほど収入のない信用度の低い人たちに向けた住宅ローンで、そもそも金融機関としては危険性の高い融資となる。にもかかわらず、彼らはそのローンを証券化して売ることを考え、証券を組み込んだ金融商品を広く世界各国の投資家に売った。好景気のなかで住宅価格の上昇に伴い、証券も金融商品も値段が上がって人気となり、さらに高値で売買されるようになった。
しかし、もともと信用度の低い人たち向けのローンなので金利は高い。好景気が続き、給料が上がって購入した住宅の担保価値も上がっているうちは金利の返済もできた。
ところが不景気になると、たちまち収入が減って、高利のローンが支払えなくなる人が続出した。住宅を売ってローンを相殺しようにも担保価値が下っているので、それもできない。
結果としてハイリターンを謳(うた)ったサブプライム住宅ローンの証券は紙くず同然となり、それを組み込んだ金融商品の価格も下落して、市場では投げ売り状態に陥った。金融主導で「強欲(ごうよく)」を商品化した報(むく)いといえばそれまでだが、2008年9月にサブプライムローンに乗っかった大手投資銀行グループの「リーマン・ブラザーズ」が倒産し、それが引き金となって世界的な金融危機が起きた。
金融工学を駆使したモラルなき秀才たちが経済を動かした結果である。この後遺症は、いまも続いている。
---owari---
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