(はやぶさ2 人工クレーター実験に成功 )
① ""はやぶさ2 人工クレーター実験に成功 JAXA""
2019年4月5日 16時38分 、はやぶさ2
小惑星「リュウグウ」の内部を調べるため、人工のクレーターをつくる世界初のミッションに挑戦した「はやぶさ2」について、JAXA=宇宙航空研究開発機構は、小惑星の表面に金属の塊を衝突させることに成功し、クレーターが形成される際にできる噴出物を確認したと発表しました。
「はやぶさ2」は小惑星「リュウグウ」に人工のクレーターをつくるため、5日午前11時まえに、高度500メートルで金属の塊を発射する「インパクタ」と呼ばれる装置を切り離しました。
そして、その40分後の午前11時半すぎにインパクタは自動的に爆発して、小惑星の表面にクレーターをつくる金属の塊を秒速2キロの高速で発射したとみられます。
JAXAは計画の成否を確認するため、「はやぶさ2」が切り離した小型カメラの画像を受信して、何が映っているのか詳しく調べました。
その結果、衝突予定時刻の直後、小惑星の表面からクレーターができる際に飛び散る岩石などの噴出物がカーテン状に広がる様子が確認されました。
このことからJAXAは「インパクタから発射した金属の塊を小惑星に衝突させる実験に成功した」と発表し、会見でプロジェクトの担当者は「人工のクレーターがつくられている可能性が高い」と述べました。
「はやぶさ2」は衝突で飛び散った岩石などが機体に衝突するおそれがなくなるのを待って、今月下旬にもリュウグウに接近し、上空から最終的に地表の様子を確認することにしています。
JAXAの津田雄一プロジェクトマネージャは「考えていた中でベストの結果を出すことができた。画像で衝突を確認できた際は、メンバーの間で大きな歓喜の渦が巻き起こった。今回の成功によって宇宙探査の新しい手段を確立することができた」と話しています。
🚀「直径数m規模のクレーターを期待したい」
金属の塊がリュウグウに衝突した直後の画像について、「はやぶさ2」のプロジェクトのメンバーでクレーターなどの科学観測を担当している神戸大学の荒川政彦教授は、人工クレーターがつくられた可能性は高いとしたうえで「噴出物の高さは70メートルから80メートル程度とみられる。直径数メートル規模のクレーターが形成されていることを期待したい」と話していました。
また、V字状に吹き上がる噴出物のV字の右側と左側で見え方が違う理由については「噴出物は岩や砂などの粒子だとみられ、片方はリュウグウを覆う数メートル単位の岩石があって細かい粒子の飛散を妨げた可能性がある。そのほかには金属の塊が衝突した場所が斜面だった可能性や、太陽の光の当たり具合によっても見え方が異なっている可能性もある」と話していました。
今後、ほかの画像も分析することで詳しいことが分かると言います。荒川教授は「この画像はこれまでの研究の成果の積み重ねであり、うれしいとしか言いようが無いです」と話していました。
🚀「リュウグウ」表面の噴出物の映像公開
JAXA=宇宙航空研究開発機は5日午後4時半から開いた記者会見で、「はやぶさ2」から分離されたカメラが捉えた小惑星「リュウグウ」の表面の噴出物の様子の画像を公開しました。
画像が撮影されたのは、午前11時36分で、計画通りであればリュウグウの表面に金属の塊が衝突した時刻の1秒から2秒後に撮影されたものだということです。
画像の中央に見えるリュウグウの赤道部分よりわずかに北側の表面から、Vの字を描くように噴出物の線が宇宙空間に向かって飛び出しているのがわかります。高さは70メートルから80メートル程度とみられるということで、向かって右に見える北側の方が南側に比べてはっきりと写っています。
🚀「これ以上望むものない」
津田プロジェクトマネージャは「大変興奮してます。やってみなければ分からない運用でした。そのために非常に綿密に、打ち上げたあとも、『リュウグウ』に着いたあとも、検討を進めてきました。それをすべて計画どおりできました。実際に予定した地点に衝突の反応とみられるものが観察できているので、これ以上望むものはない。そういう成功だと思ってます」と話していました。
🚀噴出の画像から分かることは…
荒川教授は、噴出物を捉えた画像から、「噴出物の右側は結構はっきりと見えていて、左側はちょっと薄く見えている。この理由については局所的に斜めになっている場所に当たった可能性と、太陽光の加減で片方だけが濃く見えている可能性がある。さらには左の方の表面は弾丸の大きさに比べてかなり小さな粒子があり、右側は大きい岩石があるといった不均質な場所に金属弾が当たった可能性もある」と話しています。