夕刊フジ 習近平国家主席率いる中国に、重大疑惑が浮上した。オーストラリアの次期潜水艦開発計画に、日本が誇る海上自衛隊の最新鋭潜水艦「そうりゅう型」などが最終候補に残っているが、これらの機密情報にサイバー攻撃を仕掛けたとして、豪有力紙が名指しで中国を指摘したのだ。
中国は国際法を無視するように南シナ海や東シナ海で軍事的覇権を強めているが、日の丸印の最新技術に戦々恐々としているのか。
豪有力紙「オーストラリアン」は9日、同国政府が進めている次期潜水艦の共同開発計画をめぐり、関係国の企業などに、機密情報入手を狙ったサイバー攻撃が繰り返し行われている-と報じた。
ネットワークへの侵入を試みている可能性もあるという。
関与が疑われているのは中国とロシアだ。サイバー攻撃は過去数カ月間にわたって続いているという。ネットワークへの侵入はなく、現時点で重大情報の流出は確認されていない。
独防衛企業関係者は同紙に対し、造船所で毎晩、ハッキングの試みが「30~40件確認されている」と認めている。受注競争を展開する日本やフランスの関係先も、同様に攻撃対象になっているとみていい。
中国は、南シナ海のほぼ全域を囲む9つの線からなる「九段線」(赤い舌)を引き、大部分を「自国の領土・領海だ」と強弁している。
オーストラリアは、こうした中国の動きを監視するためにも、最新の潜水艦を配備しようとしている。
日本とドイツ、フランスの3カ国は、今月末までにオーストラリア政府に次期潜水艦開発計画案を提出する予定だ。
各国とも高い技術を持つが、防衛省関係者は「日本の潜水艦技術が圧倒的に高い。『対中国』という豪の目的に照らしても、日本が受注するだろう」との見方を示している。
日本が誇る潜水艦「そうりゅう型」の技術は、どのようなものなのか。
2009年の就役した海上自衛隊の潜水艦「そうりゅう型」の最大の特徴は、浮上して酸素を取り込まないでも動力を得ることができる「AIP」機関を採用している点だ。AIPは「非大気依存推進」と訳される。
原子力潜水艦ではない、通常型潜水艦はディーゼル機関を動かすにあたり、大気中の酸素を取り入れる必要がある。
このため、定期的な浮上が必要だったが、吸排気のために海面近くまで浮上することは、自ら敵に「発見してください」と言わんばかりの自殺行為に等しい。
だが、「そうりゅう型」は、この弱点をAIP機関で克服した。
具体的には、液体酸素を気化し、そこから酸素を得て燃料を燃焼させる。
シリンダー内のヘリウムガスがその熱で膨脹し、海水でシリンダーを冷やして今度は圧縮する。この繰り返しでピストンを動かすシステムだ。
従来の通常型潜水艦は数日しか潜れなかったが、このAIP機関によって2週間以上という長期の連続潜行を可能にした
潜水艦の命である「静粛性」も世界最高峰といえる。
オーストラリアが「そうりゅう型」を採用すれば、中国を、世界最強の通常型潜水艦が南北から「挟み撃ち」する格好となる。中国にとって、深刻な脅威となるのは間違いない。
軍事ジャーナリストの井上和彦氏は「海自の『そうりゅう型』は、通常型潜水艦では世界最強最大だ。そもそも、日本の潜水艦の静粛性は文句なく世界一で、運動性能も非常に高い。日本とオーストラリアが同じ型の潜水艦を運用すれば、部品の相互提供などが可能となり“互換性”が高まる。日豪連携で、太平洋上で効果的な作戦行動を取れる」と語った。
これに対し、かつて「ドラをたたきながら水中を進む」と揶揄(やゆ)された、中国の原子力潜水艦や通常型潜水艦の実力はどうか。
井上氏は「日本と比べると、大人と子供ぐらいの差がある。中国は何よりも、日本の潜水艦とレーダーの技術を欲しがっている」と分析した。
日豪両国は今月下旬、シドニーで外務・防衛閣僚会合(2プラス2)を開催する方向で最終調整に入った。中国の南シナ海での横暴に、連携して対処することを確認するとともに、日本側は「そうりゅう型」の売り込みにも全力を挙げる方針だ。