三方よしとは、日本に伝わる経営哲学の一つで、具体的には「売り手よし・買い手よし・世間よし」の三つの視点を指し、商売においては、売り手だけが儲けるのではなく、買い手にも価値を提供し、そして取引自体が地域・社会全体の利益につながるものでなくてはならない、とする言葉。また、近江商人には「陰徳善事」、つまり人に知られないよう、密かに善い行いをすることこそ、重要であるとの教えがある。多くの家の家訓に残されているこの考えは、見返りを求めない奉仕こそ、真の信用が得られることを教えてくれる。 日本資本主義の父、「論語と算盤」でも有名な渋沢栄一も、三方よしの精神に触れている。「われも富み、人も富み、而(しか)して国家の進歩発達を助ける富にして、はじめて、真正の富と言い得るのである」(「渋沢栄一訓言集」)と述べている。
中居トラブル報道が明らかにしつつあるのは、フジテレビという放送事業者の幹部職員が、自社の女子アナウンサーを接待要員のように扱って有力タレント等の接待の席に同席させていたのであり、女子アナウンサーは、有力プロデューサーである幹部の意向には断れなかったとのこと。 これは、ジャニーズ問題や宝塚問題でも見られたように、その背景に権力の勾配という問題が隠されている。断ったら自分の不利になると思い、意に沿わない会合でも出席することになり、文春報道のとおりであるなら、その過程で二人きりになって被害を受けたとのこと。
フジテレビとしては、有力タレントを使って視聴率の取れる番組を作る為には、自社の女子社員を接待の席に同席させることは営業上で半ば慣習化していたのだったのだろう。しかし、そのようなことで自社が利益を得たとしても、その陰には性加害に泣いている女子社員がいて、また、報道しない自由ということで発生したトラブルを隠すことによって、それが明るみに出た時に世間の批判を受けることになっている。そもそも、そのようなタレントを番組に使い続けるは、ひいては、フジテレビ自体の社内の風紀を乱すことに繋がり、テレビ番組が与える影響力ということでは、広い意味で社会全体に何らかの害を与えることになってはいないだろうか。
「取引全体が社会全体の利益につながるものでなくてはならない」という三方よしの思考から今の日本社会を見てみると、政界でも、経済界でも、芸能界でも、それに反することが行われているように思えてならない。
しかし、中居やフジテレビの存在が全て悪いとも言い難い面もある。中居はスマップというグループのリーダーで、様々な楽曲やパフォーマンスで我々を楽しませてくれた存在であった。女性をセックスの道具扱いにしていたことは、単に個人的な問題ではなく、世間に与える彼の影響を考えると、あってはならないことだと考えるが、彼が全くの極悪非道な人間であるとも断定出来ない。もし、彼にやり直す意図があるのなら、まず、何が悪かったのかを真摯に反省し、地上波に復帰することは困難だろうが、その反省に立って新たな行動を模索していって欲しい。また、フジテレビについては、芸能部門に関係していることから、多少なりとも、コンプライアンス的にルーズである社内風土が形成されていたのだろうが、純粋な第三者による検証を受けて、根本的に社内風土を改善して欲しい。私は、フジテレビも関与している、剣客商売や鬼平犯科帳などの時代劇が大好きなので、フジテレビが潰れてしまって、これらの放送が見えなくなるのは悲しい。しかし、ワイドナショーなどについては、当分は見たくない。