私たちは実際に謙遜な人、相手のために生きる人になる必要があります。ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』に、このような話が出てきます。一人の旅人が村に入ってきました。旅人は、あまりにもみすぼらしい姿をして憎悪に満ちた目つきをしていたので、誰も彼を見向きもしませんでした。彼は寒い中終日その村をさまよいましたが、どこにも食べ物を得られず、旅館も彼にドアを開けてくれませんでした。彼は刑務所から出てきたという身分証明書を持っていたからでした。そのような時彼はあるおばさんの紹介で、ミリエル神父の家に来ました。
(ノックの音)「私の名前はジャンバルジャン、19年間服役して出所したばかりの危険な者です」と身分証明書の内容を朗読ました。
ミリエル神父はジャンバルジャンに「寒いから中に入りなさい。あなたがどんな人なのか話す必要はありません。あなたの名前はすでに私が知っています。あなたの名前は私の兄弟です、他に何の名前が必要でしょうか」。「あなたは私の兄弟です。他に名前は必要ありません!」
温かい食事が終わって準備された寝室に入ったジャンバルジャンは、しばらく過ぎ去った日々を回想しました。ジャンバルジャンは幼い時に親を失いました。彼には姉が一人いましたが、姉の夫が死ぬとジャンバルジャンは姉の家族まで養うことになりました。姉の子供たちは、幼児から8歳まで7人もいました。彼は薪を割り、他人の家の農業も手伝って報酬を受けるなどして、休まないで熱心に仕事をしました。彼の姉も早朝から夜遅くまで労働しました。ですが、子供7人を養うのは大変でした。とりわけ寒い冬、ジャンバルジャンはついに仕事を失ってしまいました。家の中には、パン一切れもありませんでした。あまりにもお腹が空いた甥は、泣く力もありませんでした。その時ジャンバルジャンは、パンを盗んで懲役5年を言い渡されたのでした。服役中 4回脱獄を試みて、14年の追加刑を受け、合計19年の刑務所生活を終えて出てきたのでした。
姉さんや子供たちはどのようになっただろうか?パンを盗もうとしたことは、本当に愚かだった。しかし、一回の誤ちで、5年の懲役と追加刑はあまりにも過酷ではないか?怒りと憎しみに満ちたジャンバルジャンはそう言って眠りました。
翌朝、家政婦がミリエル神父を急いで呼びました。「神父、神父、銀食器がすべて消えてしまいました。なんてことでしょう。昨日あいつが恵みも知らずにすべて盗んだようです」。
その時神父はこのように話しました。「その銀食器は私たちのものだったのですか?私は銀食器はずいぶん前から持っていませんでした。それは貧しい人々のものです。昨日の夜、彼は貧しい旅人でした」
このような会話をしている時に、警察がジャンバルジャンを捕まえて神父の家に入ってきました。ミリエル神父はすぐにジャンバルジャンに近寄って、回りの人に聞こえるように大きな声で「また会えてうれしいです。しかし、なぜこの銀の燭台は置いていったのですか?他の銀食器と一緒にあげたではないですか?」
それとともに、ジャンバルジャンにだけ聞こえる声でこう話しました。「この銀食器は、善良な人になるために、使わなければならないということを忘れてはいけないよ」。