6.ペテロがみた幻の意味
ある人々はペテロの幻の経験を取り上げ、イエス様がすべての獣を清い物にしたではないかと言うかもしれません。この質問に対する答えを探すために、使徒行伝10章を開き、一緒に読んでみましょう。10章全体を読んだ人は、この幻が食べ物に関する教えではないという事実を理解するはずです。当時、キリストの弟子たちやユダヤ人たちは、異邦人を不浄のものと考えていましたが、神様はそのような間違った観念を捨てさせ、正しくするためにペテロにこの経験を与えられたことが分かるはずです。
少し詳しく見ていくことにしましょう。ある日、異邦人であるコルネリオに天使が現れ、ペテロを彼の家に連れて来るようにと言いました。そこでコルネリオは、ペテロを自分の家に連れてくるように僕たちに命じました。するとちょうど同じ頃、ペテロも夢心地の中で次のような幻をみたのです。
「すると、天が開け、大きな布のような入れ物が、四すみをつるされて、地上に降りて来るのを見た。その中には、地上の四つ足や這うもの、また空の鳥など、各種の生きものがはいっていた。そして声が彼に聞えてきた、『ペテロよ。立って、それらをほふって食べなさい』。ペテロは言った、『主よ、それはできません。わたしは今までに、清くないもの、汚れたものは、何一つ食べたことがありません』。すると、声が二度目にかかってきた、『神がきよめたものを、清くないなどと言ってはならない』。こんなことが三度もあってから、その入れ物はすぐ天に引き上げられた」(使徒行伝10:11-16)。
ここで私たちがまず覚えておくべきことは、ペテロがこの幻をみたのは、イエス様が十字架で亡くなられ昇天された後のことだったということです。この時点でペテロは依然として「わたしは今までに、清くないもの、汚れたものは、何一つ食べたことがありません」と言っているではありませんか!十字架の後も、弟子たちは変わらずに清いものと汚れたものを区別していたことが分かります。
では元の話に戻りましょう。ペテロがこの幻をみてすぐ、コルネリオの使いが彼を訪ねて来ました。この時聖霊はペテロに、この人たちについて行きなさいと言われました。そこでペテロは彼らについてコルネリオの家に向かったのです。ペテロに会うと、コルネリオはペテロの前にひざまずいてお辞儀をしようとしましたが、ペテロは「お立ちなさい。わたしも同じ人間です」(使徒行伝10:26)と言いました。
そしてペテロは、コルネリオの家に集まってきた人々に、自身が目にした幻の意味をこのように説明しました。「あなたがたが知っているとおり、ユダヤ人が他国の人と交際したり、出入りしたりすることは、禁じられています。ところが、神は、どんな人間をも清くないとか、汚れているとか言ってはならないと、わたしにお示しになりました」(使徒行伝10:28)。
ペテロ自身が、自分がみた幻は、清い生き物と汚れた生き物を区別せず食べなさいというものではなく、神様が、異邦人であるコルネリオの信仰を受け入れておられることを、このような印象的な幻を通して示してくださったことだと解説しています。この幻は、ペテロを始め弟子たちが、これ以上、異邦人を不浄で汚れたものと見なしてはならないことを教えようとされたものなのです。