同じ地区の小学校,中学校数校の先生たちが集まり,会場となる学校の授業を参観したり,テーマを挙げて協議をしたりする研修会がありました。
年に3回行われます。
会場校となった先生方,お疲れ様です。
全学級が授業を見せるということで,どの先生もあれこれ準備をしたことでしょう…
掲示物がとても整っていてきれいでした。
違う学校の空気を吸い,違う先生の授業を見るっていいことですよね。
新しい刺激をもらえるようで。
こんな機会は大切にして,前向きに臨みたいと思いました。
協議では,各校の先生たちが数名ずつ参加し小グループを編成し,意見交換をしました。
なかなか,最初はみなさん遠慮がちでしたが,時間が経てば,さすが学校の先生,口数が増えてくる人が増えました。
学習指導に関することや,生徒指導に関することなど,幅広く話題になり,それぞれの学校の現状や,先生ごとの実践を紹介したりしました。
その中で,中学校の先生が,不満気にこう言いました。
「新しく入ってきた一年生で,名前を呼ぶのに返事もしない子がいるんですが,小学校ではそういう指導はしないのですか?」
中学校の先生と話せる機会はさらに少ないので,私も積極的に言葉を返しました。
「うちではもちろんその指導はしていますが,実際にはできていない子もいますね。小学校での指導の仕方を見直すべきかもしれませんね。」
本音です。
中学1年生の姿に見える課題は,素直に小学校に責任があると思うべきでしょう。
特に私は昨年度も6年生担任でしたから。
それ以降も,その中学校の先生は,口をとがらせるように,生徒の不満を挙げていました。
話題は授業のことに。
さっきの「指名と返事」の件にも関連して,子どもの「発表の仕方」が話題に。
各小学校から
「積極的に発表する子が多いです」
「発表の仕方に課題があるので,話型指導を進めています。」
「うちではグループ活動を多く取り入れています。」
「学び合うことをめざして,子ども同士が進んで話したり聞いたり…」
実践が紹介される中,私はふと,中学校の先生たちに切り返してみました。
「中学校ではどのように発表をさせているですか。」
中学校の先生たちは,苦笑いのような表情でお互いに顔を覗き込みながら
「手を挙げて発表ってことはないですね。」
「えっ」
「そんな,小学校みたいにしないですよ。」
「じゃあ,子どもが意見を言うときはどうするんですか?」
「全部,指名です。」
「○○。はい次,△△みたいに?」
「そうです。そのときに返事が少なくて…」
「なぜ手を挙げて発表させないのですか?」
「なぜって… 中学生はしないでしょう。私たちが中学生だったころもそうだったでしょう。」
「いや,でも」
「そんなとき手を挙げる子っていうのは,目立ちたがり屋か,やんちゃぼうずかですよ。」
「・・・・・・」
言葉が出ませんでした。
私以外の小学校の先生がどう受け止めたかは分かりませんが,少なくと小学校の先生の私には,大変ショックな言葉でした。
じゃあ,小学校で繰り返してきた「発表」に関する指導はどうなるんだ
じゃあ,せっかく子どもたちに身についてきた発表に関する技能はどうなるんだ
じゃあ,中学校では子どもの意欲や表現力はどこで見取るんだ
じゃあ,この先,この子たちは社会に出て,手を挙げて物を言うということはしなくてよいということなのか
言いたいことはたくさんありましたが,気付いた時には,もう話題は先に進んでいて,言えませんでした。
いや,分かるんです。
確かに中学校の授業で,生徒が盛んに手を挙げて発表することはないでしょう。
高校でも。
発達段階的に,そういったことをする子は自然と減るはずです。
「指名」で進む授業が,きっとほとんどなのではないでしょうか。
でも,問題なのは(私が思うに)
生徒が発表をしないのではなく,先生たちが,もうさせていないということです。
先生たちが,発表をあきらめているということです。
もちろん,全ての中学校の先生がそうだとは思いませんが,今回話をした中学校の先生たちからは,ありありとそれが伝わってくるようで,大変さびしい思いがしました。
「小中連携」などと言いながら,子どもの成長に関してなんら連携できていない部分があるということです。
小学校で大事にしてきたことが,中学校になったとたん消えるんですから。
中学校の先生たちが,入学してきた子たちに不満があることは,真摯に受け止めます。
だから,ぜひ中学校の先生たちも,逆戻りして,その子たちが小学校のときにできていたことを,大事にしてほしいと願います。