何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

ボンボン魔法で元気になれ

2015-10-23 12:45:18 | 
見慣れない本がある。

カラフルな表紙にコーギーと思しき笑顔のワンコ、飾り文字で「魔女犬ボンボン」 (廣嶋玲子・作 KeG・絵)とある。
ボンボン??

学校でワンコの介護について話したところ、「犬好きが読む本だ」といって手渡されたそうだ、ボンボン。
ボンボンに限らずあまり本を読まない筋肉頭ではあるが、心配してわざわざ貸してくれたものを読まずに返してはいけないと思い、就寝前に読むことにしたようだ。
が、眠り薬より効くのか速攻寝付いてしまい、枕の肥やしボンボン。

ボンボンの表紙にはコーギーの絵があるが、ワンコ病院の待ち時間に愛くるしい目をしたコーギーに出会った。
「かわいいね」と声をかけると、大きな耳をパラボナアンテナのように動かす仕草がまた何ともかわいらしい。
飼い主さんいわく、「この犬は、自分のミドルネームを<かわいい>だと思ってる」
「むむっ、我が家と同じ。だが、我がワンコは宇宙一」などと思っていると、続けて「このコーギー、実は脳腫瘍で余命500日の宣告を受けていたのですが、それを超えて頑張ってくれているのです。今日は、現状での薬の量を調整するための検査なのです」という衝撃の言葉。
もう13歳でもあるが家族からすればまだ13歳の犬も人間年齢に換算すれば・・・・・。
家族の愛情にたっぷり包まれていることが伝わる愛くるしい目をしたコーギーに、心からのエールを贈る。
頑張れコーギー!


ボンボンまで登場するほどに、家族皆が心配してアチコチで話をしている我がワンコの現在。
体調を崩す前の朝昼夕深夜の四回のチッチサイクルに戻ったが、チッチの量が少なめで色が濃いのは、薬のせいかまだ鮮血が混じっているせいなのかは、分からない。
便秘生活も三日目になり本人も気にしているようだが、これが薬の影響なのかも、分からない。
処方されている六日分の薬を終え、再度の診察で全快の言葉を待つのみだが、それまでにボンボンを読み終えることを出来るのか?

今時のボンボンに匹敵するものが自分の時代にあったかと振り返り、思い出したのが
「クレヨン王国の12か月」(福永礼三)
ある日クレヨン王国の王様が失踪してしまい、王国の閣僚たちは慌てふためく。
『王様は太陽じゃ。光じゃ。
 王様を失えば我々はだんだん色を失って、つまり、世界は白黒の写真のように、形と影だけになってしまう』
王様は、「王妃の12の悪い癖が直れば王国に戻る」と書置きに残していたので、閣僚たちは王様を連れ戻す旅に出るよう王妃に頼み、人間の子供のユカはその伴をすることになる。
これは、12の町を旅するなかで王妃自身が悪い癖に気付き反省し改めていく過程を描く物語である。

1月の町では散らかし癖、2月の町ではお寝坊、3月の町では嘘つき、4月の町では自慢や
5月の町では欲しがり癖、6月の町では偏食、7月の町では意地っ張り、8月の町ではげらげら笑いのすぐ怒り。
9月の町ではけちんぼ、10月の町では人のせいにする、11月の町では疑い癖、12月の町ではお化粧3時間。

どの癖も、子供ながらドキリとするものであり、気づいていながら注意を受けながら直せないものばかりではないか。
クレヨン王国の閣僚は、その悪い癖をもった王妃を追い出してしまおうとはしない。悪い癖をもつ王妃を娶った王様を追い出してしまおうともしていない。
『王様は太陽じゃ。光じゃ。
 王様を失えば我々はだんだん色を失って、つまり、世界は白黒の写真のように、形と影だけになってしまう』
閣僚たちは慌てふためき、王様を連れ戻す旅のなかで癖を直すように、王妃にお願いしている。

これが児童書としては重要なことなのだと感じながら読み返していた。
誰しも悪い癖はあるし、分かっていても直せない習慣もある。その弱いところをもって排除にかかるのではなく、自ら間違いに気づかせ、直すのに十分な時間を与え「待つ」という姿勢を描き、しかも月々の町ごとに美しい詩まで紹介されている。

児童書としてだけでなく、薹が立ってしまった今読んでも考えさせられるところがあったが、子供の頃あれほど繰り返し読んだはずであるのに、7月の癖だけは今もって直っていない。
私の世界は少なくとも12分の1分だけ光を失っているのかもしれない。