四代目桶屋金之助の世界

おろかなるひとり言
胸を張れるような自慢話などはありません。
照れくさい話や恥ずかしい話ばかりです。

オフコース 『さよなら』

2016-11-23 17:03:11 | 音楽
23歳、夏。グァム島。
ツアーで知り合った女の娘。
東京近郊在住。21歳。

なんとなく気が合った。
海を見ながらいろんなことを話していた。
時間はあっという間に過ぎていった。

成田空港早朝7時。
このまま家に帰るのはさみしい。
僕は彼女に思い切って言ってみた。
「せっかくだから、東京の街を案内してくれる?」
彼女はしばらくうつむいた後、笑顔で答えてくれた。
「うん。どこがいいかな、新宿、渋谷、それとも原宿?」
うれしかった。彼女といっしょならどこでもいい。
僕たちはおしゃれな喫茶店に入り、モーニングコーヒーを飲んだ後、新宿へと向かった。

新宿アルタ前。
人、人、人・・・。
その中で僕たちは手をつないで歩いていた。
まるでテレビドラマの主人公のように・・・。

東京駅新幹線ホーム。
西の空は夕焼けがきれいに映っていた。
もっといっしょに二人でいたかった。
発車のベルが二人に隙間を開ける。
車内に入ると、さみしげな彼女の姿が目に入ってきた。
「また、会おうよ。電話するから。」
扉が閉まり、手を振る彼女は愛おしいかった。

遠距離恋愛。
僕たちは電話で愛を確かめていた。
公衆電話の箱の中、100円玉は次から次へと落ちていく。
会話の途中、「ツー、ツー、ツー」。
むなしい音であった。

若かった。夢中であった。
東京へも何度か行った。
東京という街が新鮮であった。
二人でいることが楽しかった。
でも・・・、長続きはしなかった。

秋風は隙間風に変わっていた。
11月の終わりごろ、その電話はかかってきた。
公衆電話の箱の中から彼女は震えながら声をだして言った。
「もう、これで終わりにしようよ。ごめんなさい。」
なんとなく予感はしていた。
僕も声に詰まった。
冗談であってほしい。
寒い夜であった。

受話器を置いて、部屋に戻ってラジオのスイッチを入れる。
頭の中はまっ白。悲しかった。
しばらくするとオフコースの『さよなら』が流れてきた。
あまりにも今の心境とマッチしている。

「僕らは自由だね」
そんな会話も二人で楽しくしていた。

♪さよなら さよなら さよなら もうすぐ外は白い冬
 愛したのはたしかに君だけ そのままの君だけ

過ぎ去った青春の1ページ。
思い出はもう、ポケットに入るぐらいの大きさになっている。



コメント
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