軍医学校跡地から発見された人骨問題を究明する会(代表常石敬一神奈川大学教授)の機関紙「究明する会ニュース」№148 2011.3.13 が管理人に送付されてきた。その中から、新宿区議会で河野達男議員(社会民主党)が一般質問をした概要記録を転載する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・転 載・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
平成l二二年度新宿区議会 第一回定例会一般質問(二月二五日)
国の戸山5号宿舎跡地の人体標本等の発掘魂査について
質問者 河野達男
この間題は、これまでも何度となく議会で取り上げてきました。そして今、戸山公園内の国の戸山5号宿舎跡地に対し、厚生労働省は発掘調査を開始しました。
厚労省は今回の調査の目的を「旧陸軍軍医学校に埋められたとされる人骨について掘削によりその有無を確認することを目的とする」としています。
そもそもこの地は、尾張徳川家の下屋敷跡だったところに、一九二九年旧日本軍の陸軍軍医学校が移転し、周辺にも陸軍に関係のある施設が集中していました。敗戦後、戦争に関するさまざまな物証の隠蔽が行われ、その中で、人体標本も埋められたものと思われます。
そして、当時の軍医学校の元看護師であった石井十世さんによれば「人体標本を数カ所に埋めた」と人骨を埋めたことを示唆する証言が行われ、二〇〇六年、当時の川崎厚生労働大臣は、「標本が埋まっている可能性が高い戸山5号宿舎周辺を調査する」と明言されました。
厚生労働大臣は、平成二二年度予算に調査費を計上し、昨年この宿舎は解体され、しばらく更地の状態が続きました。
そして本年二月八日、発掘調査を行うべく施工業者との契約を締結し、二月一五日に地元の現場近隣の六町会の会長に対し、新宿区立会いのもと厚生労働省と事業者は、地元説明会を開催しました。
そこでは、二月二一日試掘を六カ所で開始し、三月三日から約三〇〇〇平方メートルの敷地全体の本調査を開始するとのことであります。
本日午前中も私は、現地を見てきました。重機が三台入って試掘と思われる掘削作業が行われていました。
そこでお聞きします。
一点目は、私もいま一部述べましたが、本年度に入ってからのこの間の経緯についてお聞かせください。また、一月一五日の地元町会長への説明の概要とその時の質疑や意見についてお聞かせください。
二点目は、どのような手法で調査が行われるのかということです。もちろん新宿区が発注したものではありませんから詳細にまでとはいいませんが、人骨や人体標本については、一九八九年、現在の国立感染症研究所建設時に発見された一〇〇体を超える人骨を、厚生省が調査を拒否し、このため、新宿区が独自に鑑定を専門家に依頼するという経過があります。
また、調査は「死体の一部」を収集することであり尊厳を損なわないようにし、同時に身元確認や原因究明につながるような周辺情報も合わせて収集を求めてほしいという指摘もあります。
区も大きな関心を持って調査を見守ることと思いますが、調査内容などお聞かせいただきたいと思います。
三点目は、厚生労働省の調査概要には、「調査に当たっては埋蔵文化財包蔵地であることから、埋蔵文化財等の地質を見極められる調査員を常時二名配置する」としています。この事からも、新宿区としてしっかりとした対応が求められていると思いますが、お考えをお聞かせください。
四点目は、調査期間中に調査関係者および一般住民を対象とした現地説明会を厚生労働省とともに開催することを施工業者に示しています。旧陸軍の七三一部隊との関連など、歴史の闇に光が差す可能性を指摘する報道もあります。
新宿区として重大な関心を持って、厚生労働省に調査の公開などをしっかりと申し入れるべきと考えますが、区としてのお考えをお聞かせください。
《答弁要旨》
国の戸山5号宿舎跡地の人体標本等の発掘調査に関するお尋ねについてです。
まず、本年度に入ってからの経緯と二月一五日の地元町会長への説明についてです。
戸山5号宿舎跡地の人体標本等の発掘調査については、昨年五月に、厚生労働省から区に対して、二二年度予算で当該調査を実施する旨、説明があり、当該調査に伴う文化財保護法の手続きについて意見交換を行いました。また、九月には、区が立ち会う中で、地元町会長に解体工事の説明が行われ、一〇月には解体工事が完了したところです。
このような経緯を踏まえ、本年二月一五日には、区立ち会いの下、地元町会長に発掘調査の説明が行われています。
そこでは、人骨の有無を確認することを目的として、二月二一日より、試掘調査を開始し、三月三日以降、敷地全体を対象として掘削調査を実施すること等が説明されました。
また、各地区の町会長からは、地域住民への説明用チラシや人骨等が見つかった場合の再度の説明等について、意見や要望が出され、厚生労働省からも、チラシの必要部数を準備することや、人骨が発掘された場合には、再度の説明を行う旨等の回答がなされたところです。
次に、発掘調査の内容についてです。
発掘調査については、まず、場内六カ所で試掘調査を実施し、槻削する地層・深度を確認するとしています。その後、重機及び人力によって、敷地全体の掘削を行い、人骨の有無を確認するとしています。
また、人骨らしき物が出土した場合には、一旦、作業を中止し、土地の管理者として警察に通報する等、法令で定める所要の手続きに従い、適正に処理することや、埋蔵文化財等の地質を見極められる調査員を常時二名配置し、調査を行うとの説明を、区としても、受けています。
次に、発掘調査に関する区としての対応に関するお尋ねについてです。
本調査についてでは、平成二二年第二回定例区議会でも、ご答弁したとおり、「調査の目的が達成される適切な手法で、十分な調査を行う」よう、繰り返し、厚生労働省に、区として申し入れを行ってきているところです。また、当該調査地が埋蔵文化財包蔵地であることから、文化財保護法に基づき、遺跡の保護、保存に必要な指導・助言も行ってきています。
そのため、二月二一日から実施している試掘調査には、埋蔵文化財を毀損することのないよう、区の学芸員を現地で立ち会わせています。また、調査の目的が達成されるよう、あらためて、厚生労働省に申し入れを行っています。
次に、厚生労働省に、調査の公開を行うよう区として申し入れをすべきとのお尋ねについてです。
本調査については、先にも述べたとおり、調査の目的が達成される適切な手法で、必要かつ十分な調査が行われていることを、近隣住民をはじめとするこの間題に関心を持つ人々に理解してもらうことが大切であると考えます。
そのため、調査期間中の説明会の実施や、調査結果を公表する等、適切な対応をとるよう、厚生労働省に申し入れを行っていきます。