ハイティンク&ロンドン響 来日ツアー最終公演を聴いた。会場は東京文化会館。モーツァルト、マーラーともに初日が余りに素晴らしかったため急遽聴くことにしたのだが、初日の感動には遠く及ばない結果となった。
演目の違い、会場の違い、演奏者たちのコンディションの違い、様々な要因が重なったのだと思われるが、一番の原因は燃えたたない弦楽器群である。ペライアとのベートーヴェン: 第4協奏曲から、なかなか火がつかない。第1楽章など常にベールに覆われているようなもどかしい響き。第2楽章の厚みのあるユニゾンで「おっ、スイッチが入ったか?」と期待させるも、フィナーレは肩透かし。
因みに、ペライアも音にいつもの結晶度が不足していたり、ミスタッチが多かったりと、絶好調とは呼べなかったように思われる。
さて、ブラームス。
「弦のプルトも増えたことだし、宜しく頼みますよ」
と祈りつつ臨んだか、やはり音が迫ってこない。ハイティンクのオーソドックスな解釈、誠実なアプローチに共感を抱きつつも、魂を震わしてくれるところまでには至らないのだ。
ここがNHKホールなら会場のせいとも言えようが、かれこれ40年以上も通う東京文化会館である。しかも、上手寄りとはいえ中央通路から2列目というから悪い席ではない。それでも、音が来ないというのは、やはりコンマスを始めとする弦楽セクションに問題があるのだと思われてならない。
一方、管楽器は素晴らしかった(第2楽章で、3番トロンボーン奏者が脚を組み、腕組みして寝ていたのは感心しないが・・)。
特にフィナーレ導入部の朗々たるホルンとそれに続くフルートの清冽さ! さらには居眠りを挽回する(笑)トロンボーンのコラールの深々とした響きなど。
弦もようやくコーダにきて鳴らしてきたが、「おいおい、それができるなら、もっと早くしてよ」と言いたくもなる。まあ、長いツアーで疲れているのは分かるけど・・。
結局、ブラームスのオーケストレーションが弦楽器主体であることが災いしていたように思われてならない。今宵、もっとも感動したのが、管楽器、打楽器、ピアノ、ハープという編成のパーセル(スタッキー編)「メアリー女王のための葬送音楽」だったことが、その証左ともなろうか。あの溶けるような金管のアンサンブルを聴いて、どれほどベートーヴェンやブラームスに期待したことだろう!
【プログラムA】
パーセル(スタッキー編): メアリー女王のための葬送音楽
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第4番 ト長調 op.58 (ピアノ: マレイ・ペライア)
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ブラームス: 交響曲第1番 ハ短調 op.68