「ペレアス」を聴いた後、先日心斎橋で出逢った「モーツァルト 伝説の録音」を摘まみ聴き。
内田光子は「針音は10秒で消える」と語っているが、中には「流石にここまで盛大だと聴き辛い」と思える復刻も混ざっている。宿命ゆえに仕方ないとはいえ、再生装置が本格的になるほどにそうなるのではないか? そんなとき、地下のリスニングルームの扉を開けたまま1階のリビングに上がって離れてみると、実に心懐かしい温かな音に聴こえたりする。
この針音や再生に伴うノイズというのは実に厄介で、SPそのものを聴く分には全く気にならないのないのだろうけど、その音がデジタル化されてしまうと少々耳に刺々しくなるのだ。
LPレコードを聴きながらですら、「ここに鳴っている音は素敵だけど、このまま板起こしにしたら耳障りだろうな」と思うことがある。針音の量の絶対的に違うSPなら尚更だろう。
もっとも、当セットの復刻を否定するつもりはまったくない。作り手の言うとおり、ノイズを除去することで、魂の抜かれてしまった例はいくらでもあるワケで、ここではノイズの向こうに演奏家たちの命の炎が灯っていることを尊ぶべきなのだ。ただ、もし自分が復刻者だったら、ここまで残す勇気はなかったかも知れない・・。
結論として、SPそのものを聴くのが最高ということなのだろうけれど、LPレコードだけで生活が壊れているところ、その禁断の世界に足を踏み入れることだけは思いとどまらねばならない。