中国軍が南シナ海の西沙諸島の島に地対空ミサイル部隊を展開させていると指摘されていることについて、中国政府は部隊を展開しているかどうか確認は避けたものの、王毅外相は南シナ海で中国が進めている軍備の増強については、「自衛のためだ」と述べて正当化しました。
アメリカ政府の当局者によりますと、南シナ海の西沙諸島、英語名・パラセル諸島で、中国が実効支配しているウッディー島に先週から中国軍が地対空ミサイル部隊を展開させていることがアメリカの監視活動で確認されたということです。これについて、中国外務省の洪磊報道官は、「具体的な状況は承知していない」と述べ、部隊を展開しているかどうかの確認は避けました。
また中国の王毅外相は、17日北京で行われたオーストラリアのビショップ外相との会談後の記者会見の中で「西側メディアが、ニュースを作り出すための一種のやり方だと思う」と述べたうえで、「中国が島で建設しているのは、限定的で必要な自衛のための施設だ。これは国際法上すべての国に与えられている自衛のための権利によるもので非難される余地はない」と述べ、南シナ海の島々で中国が進めている軍備の増強を正当化しました。
また王外相は、アメリカとASEANの首脳会議の中で、軍事化を避けることなどを確認した宣言が採択されたことに触れ「軍事化をしないためには、域外の国も含めて各国がともに努力すべきだ」と述べ、中国ばかりが軍事化を推し進めていると非難する動きを強くけん制しました。
南シナ海と中国
石油や天然ガスなどの地下資源が豊富とされている南シナ海では、中国が海洋進出を活発化させていて、ほぼ全域の権益を主張するとともに、島々の領有権を巡り、ベトナムやフィリピン、それに台湾などと対立しています。
このうち、数十の小さな島々からなる西沙(パラセル)諸島では、ベトナム戦争中の1974年、当時、一部を支配していた南ベトナムと中国が軍事衝突し、それ以降、中国が全域の実効支配を続けています。その後も中国とベトナムの対立は続き、おととしには、中国の石油会社が海底を採掘する装置を設置したことを巡って両国の船が衝突を繰り返し、海上でのにらみ合いがおよそ2か月間にわたりました。
また、中国は、実効支配を続けるなかで、西沙諸島の島々に、次々と滑走路やヘリポート、それに軍の施設とみられる建物を建設するなど、軍事化を進めてきました。このうち、中国軍が地対空ミサイル部隊を展開させていることが確認されたウッディー島では、これまでに2400メートルを超える滑走路やヘリコプターの基地などが確認されていたうえ、去年後半には戦闘機が配備されたという情報も伝えられています。
一方、南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島では、中国が実効支配する7つの浅瀬を埋め立てて人工島を造成して、軍用機も離着陸可能な滑走路の建設を進めるなどしています。
これに対し、アメリカ軍は、南シナ海で「航行の自由作戦」と呼ばれる海軍の艦艇を航行させる活動を継続するなど、中国をけん制しています。
専門家「米軍の航行自由作戦に対抗措置か」
中国軍が南シナ海の西沙諸島の島に地対空ミサイル部隊を展開させていると指摘されていることについて、元海上自衛官で中国の軍事情勢に詳しい東京財団の小原凡司研究員は「昨年10月にはアメリカ軍に南シナ海で航行の自由作戦と呼ばれる活動でイージス艦を派遣されたが、中国は何もできず先月にもすでに2回目の航行の自由作戦が行われている。中国はこのままでは国内世論が持たず対抗措置を示す必要があった」と指摘しました。
また、「西沙諸島は中国が1970年代から実効支配していて、すでに基地が建設され戦闘機も配備されている」としたうえで「こうした場所に地対空ミサイルを置くのは段階的に圧力を高めるもので、アメリカがこの海域の緊張を高めているということを口実に軍事施設化を徐々に進めている」と述べ、アメリカへの対抗措置として軍事拠点化を進めることを正当化するねらいもあると指摘しました。
そのうえで、「アメリカ軍の艦艇や航空機は中国の軍事力行使に対して常に備えなければならないが、南シナ海で軍事行動を辞めるわけではない。衝突を避けつつもアメリカが軍事的な圧力を高めれば中国も軍事的な措置を取ることが続く」と述べ、今後も緊張した状況が続くと分析しました。
菅官房長官「既成事実化は認められない」
菅官房長官は午後の記者会見で、「南シナ海における中国の動向については、政府としては重大な関心をもって平素から情報収集と分析を行っている。ミサイル部隊の配備も含めて個々の具体的なことは事柄の性質上コメントは控えたい」と述べました。そのうえで、菅官房長官は「南シナ海における大規模で急速な埋め立て、拠点構築、軍事目的の利用など、一方的に現状を変更して緊張を高める行為は、国際社会共通の懸念だ。わが国としても、こうした行為を深刻に懸念しており、既成事実化は認められないことを改めて強調したい」と述べました。
そして、菅官房長官は「わが国としては、航行および上空飛行の自由を守るために、国際社会が連携していくことが重要だと考えている。引き続き国際社会と緊密に協力していきたい」と述べました。
中谷防衛相「透明性のある説明を」
中谷防衛大臣は防衛省で記者団に対し、「中国はウッディー島で既存の滑走路の延長工事を行うなど拠点の整備を進めており、そうした南シナ海での拠点の構築や軍事目的の利用など、現状を変更し緊張を高める一方的な行動は国際社会の共通の懸念事項だ」と述べました。そのうえで、中谷大臣は「中国は以前、『軍事化の意図はない』と発言しているので、みずからの発言を踏まえた、より説得力と透明性のある説明を求めていきたい。防衛省としては、引き続き中国の動向を注視していく」と述べました。
アメリカ政府の当局者によりますと、南シナ海の西沙諸島、英語名・パラセル諸島で、中国が実効支配しているウッディー島に先週から中国軍が地対空ミサイル部隊を展開させていることがアメリカの監視活動で確認されたということです。これについて、中国外務省の洪磊報道官は、「具体的な状況は承知していない」と述べ、部隊を展開しているかどうかの確認は避けました。
また中国の王毅外相は、17日北京で行われたオーストラリアのビショップ外相との会談後の記者会見の中で「西側メディアが、ニュースを作り出すための一種のやり方だと思う」と述べたうえで、「中国が島で建設しているのは、限定的で必要な自衛のための施設だ。これは国際法上すべての国に与えられている自衛のための権利によるもので非難される余地はない」と述べ、南シナ海の島々で中国が進めている軍備の増強を正当化しました。
また王外相は、アメリカとASEANの首脳会議の中で、軍事化を避けることなどを確認した宣言が採択されたことに触れ「軍事化をしないためには、域外の国も含めて各国がともに努力すべきだ」と述べ、中国ばかりが軍事化を推し進めていると非難する動きを強くけん制しました。
南シナ海と中国
石油や天然ガスなどの地下資源が豊富とされている南シナ海では、中国が海洋進出を活発化させていて、ほぼ全域の権益を主張するとともに、島々の領有権を巡り、ベトナムやフィリピン、それに台湾などと対立しています。
このうち、数十の小さな島々からなる西沙(パラセル)諸島では、ベトナム戦争中の1974年、当時、一部を支配していた南ベトナムと中国が軍事衝突し、それ以降、中国が全域の実効支配を続けています。その後も中国とベトナムの対立は続き、おととしには、中国の石油会社が海底を採掘する装置を設置したことを巡って両国の船が衝突を繰り返し、海上でのにらみ合いがおよそ2か月間にわたりました。
また、中国は、実効支配を続けるなかで、西沙諸島の島々に、次々と滑走路やヘリポート、それに軍の施設とみられる建物を建設するなど、軍事化を進めてきました。このうち、中国軍が地対空ミサイル部隊を展開させていることが確認されたウッディー島では、これまでに2400メートルを超える滑走路やヘリコプターの基地などが確認されていたうえ、去年後半には戦闘機が配備されたという情報も伝えられています。
一方、南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島では、中国が実効支配する7つの浅瀬を埋め立てて人工島を造成して、軍用機も離着陸可能な滑走路の建設を進めるなどしています。
これに対し、アメリカ軍は、南シナ海で「航行の自由作戦」と呼ばれる海軍の艦艇を航行させる活動を継続するなど、中国をけん制しています。
専門家「米軍の航行自由作戦に対抗措置か」
中国軍が南シナ海の西沙諸島の島に地対空ミサイル部隊を展開させていると指摘されていることについて、元海上自衛官で中国の軍事情勢に詳しい東京財団の小原凡司研究員は「昨年10月にはアメリカ軍に南シナ海で航行の自由作戦と呼ばれる活動でイージス艦を派遣されたが、中国は何もできず先月にもすでに2回目の航行の自由作戦が行われている。中国はこのままでは国内世論が持たず対抗措置を示す必要があった」と指摘しました。
また、「西沙諸島は中国が1970年代から実効支配していて、すでに基地が建設され戦闘機も配備されている」としたうえで「こうした場所に地対空ミサイルを置くのは段階的に圧力を高めるもので、アメリカがこの海域の緊張を高めているということを口実に軍事施設化を徐々に進めている」と述べ、アメリカへの対抗措置として軍事拠点化を進めることを正当化するねらいもあると指摘しました。
そのうえで、「アメリカ軍の艦艇や航空機は中国の軍事力行使に対して常に備えなければならないが、南シナ海で軍事行動を辞めるわけではない。衝突を避けつつもアメリカが軍事的な圧力を高めれば中国も軍事的な措置を取ることが続く」と述べ、今後も緊張した状況が続くと分析しました。
菅官房長官「既成事実化は認められない」
菅官房長官は午後の記者会見で、「南シナ海における中国の動向については、政府としては重大な関心をもって平素から情報収集と分析を行っている。ミサイル部隊の配備も含めて個々の具体的なことは事柄の性質上コメントは控えたい」と述べました。そのうえで、菅官房長官は「南シナ海における大規模で急速な埋め立て、拠点構築、軍事目的の利用など、一方的に現状を変更して緊張を高める行為は、国際社会共通の懸念だ。わが国としても、こうした行為を深刻に懸念しており、既成事実化は認められないことを改めて強調したい」と述べました。
そして、菅官房長官は「わが国としては、航行および上空飛行の自由を守るために、国際社会が連携していくことが重要だと考えている。引き続き国際社会と緊密に協力していきたい」と述べました。
中谷防衛相「透明性のある説明を」
中谷防衛大臣は防衛省で記者団に対し、「中国はウッディー島で既存の滑走路の延長工事を行うなど拠点の整備を進めており、そうした南シナ海での拠点の構築や軍事目的の利用など、現状を変更し緊張を高める一方的な行動は国際社会の共通の懸念事項だ」と述べました。そのうえで、中谷大臣は「中国は以前、『軍事化の意図はない』と発言しているので、みずからの発言を踏まえた、より説得力と透明性のある説明を求めていきたい。防衛省としては、引き続き中国の動向を注視していく」と述べました。