空に乾杯

日々な話やドラマの感想など雑多に書き綴ってます!

Episode_4

2020-01-30 | 空に乾杯

-Episode_4/沖田幸洋の場合-

 ぼんやりと歩いていたわけではない。けれ

ど不意に前方へ目線を送ると、女性の背中が

映る。それは紛れもない見知った女性の背中

だった。追いかけていいのだろうか。そう思

いながらも行動は相反している。

 そして見知らぬ男にその行動を制止させら

れるというあり得ない行為に阻まれる。が、

その男の無意識の行動には感謝している。

 歩き始めた僕の目線がまた女性を捉える。

彼女は怯え切った表情をしている。そんなに

険しい顔だったのだろう。察しはすぐについ

てしまう。横を通りすぎる瞬間「驚かせてご

めん」ささやくように耳打ちをする。

 彼女の反応はまったく気にしない。それが

ルールでもある。と勝手に決めつけていく自

分がいる。

 今日の空。それはどうでもよかった。あの

男が見上げた空なんて見たくもないと思った。

それでも降り注ぐ光を感じるのだから。

 僕は振り返る。そして女性の背中を見る。


また明日へと

2016-10-07 | 空に乾杯


気持ちいい空…。
天高く…そんな言葉を思いつつ見上げる。
ストレスが吹っ飛んでいく感覚。
心が悲鳴を上げていても…。
少しだけ解放されるような気がする。
煩わしさとか様々な葛藤…。
日々が精いっぱいでため息さえつけない。
それでも…今日の小さなときめきがあれば…。
また明日へと行けるような気がしてくる。


Episode_3

2016-02-29 | 空に乾杯



-Episode_3/逢坂志奈子の場合-
 男がもう一人の男の腕を掴んでこちらに向
かってくる。何事という感じではある。険し
い表情の腕を取られた男。対照的に掴んでい
る男は何事もないという至って平静であると
いうことが一瞬で感じ取れた。
 少し距離を置いてその二人を眺めてしまっ
ている。けれど、「そうしている自分が怖く
なってきたのでさらに距離を取る。
 険しい表情の男が腕を振りほどく。そうす
ると平静男はなぜだろうか。空を仰ぎ始める。
ますます興味がわいてしまった。
 同じように空を仰ぐ。空は空でしかないと
思って苦笑気味になってしまう。自分のして
いる行動が妙に可笑しくなる。時折、自分が
自分を制御できないことがあるようだ。記憶
の中にそんな感覚が残像のように残っている
のだから…。
 険しい表情の男がわたしの方へ向かってき
た。身構えてしまう自分がいる。しかし、何
も起こりはしないのだけれど。


Episode_2

2016-02-11 | 空に乾杯



-Episode_2/沢渡克真の場合-
 偶然必然…そんなことはどうでもいい。ま
た僕の目線の先に彼女が現れる。追いかけて
しまうという悪癖が…。しかし途中でそんな
自分を押し留めようとした。けれど、それが
できなくなっていた。
 見知らぬ男が僕の横をすり抜けて彼女の背
後に迫ろうとしている。それを感じたのか。
彼女はふいに立ち止まった。慌てたのは男で
ある。
 それからの行動は言うまでもない。僕はそ
の男の腕を掴んでその場を立ち去った。彼女
が振り向いたとしても何も起こりはしない。
 しばらくして男が掴んだ腕を振りほどく。
男二人がまともに顔を突き合わせる。あまり
好ましくない瞬間ではある。それでもどうに
かしないとこの場から逃れることはできない。
 僕は空を仰ぐ。気持ちの好い空色が目に飛
び込んでくる。そんな僕を男はずっと見てい
たようだ。
 男に目線を合わせると立ち去って行った。


Episode_1

2016-02-05 | 空に乾杯



-Episode_1/三木本砂羽の場合-
 ふ~と背伸びをする。たわいもないことに
何故だろうか心地好さを感じてしまう。それ
が日常にある小さな発見でもある。
 見上げる空は今日もすがすがしい印象をわ
たしにもたらすようだ。忙しない日々の中で
何かから解放されたい。そう思うことが多々
ある。けれど、そんな余裕もないから思うだ
けでそこへ至れないことばかり…。
 木陰にあるベンチに座っている男性に目線
が行ってしまう。それは見覚えのある姿だっ
たからだ。声を掛けようとしたが通り過ぎて
しまう。
 しばらくすると、背後に気配を感じたけれ
ど歩みを止めることはしない。それが現在の
気分だから…。速度を速めてみる。まだ気配
を感じる。ということはあの男性が追いかけ
てきたのだろうか。いやそんなことは…。
 前触れもなく急に足を止める。すると、背
後で慌てたような声がする。わたしはそんな
反応に心を躍らせてしまった。