-Episode_1/三木本砂羽の場合-
ふ~と背伸びをする。たわいもないことに
何故だろうか心地好さを感じてしまう。それ
が日常にある小さな発見でもある。
見上げる空は今日もすがすがしい印象をわ
たしにもたらすようだ。忙しない日々の中で
何かから解放されたい。そう思うことが多々
ある。けれど、そんな余裕もないから思うだ
けでそこへ至れないことばかり…。
木陰にあるベンチに座っている男性に目線
が行ってしまう。それは見覚えのある姿だっ
たからだ。声を掛けようとしたが通り過ぎて
しまう。
しばらくすると、背後に気配を感じたけれ
ど歩みを止めることはしない。それが現在の
気分だから…。速度を速めてみる。まだ気配
を感じる。ということはあの男性が追いかけ
てきたのだろうか。いやそんなことは…。
前触れもなく急に足を止める。すると、背
後で慌てたような声がする。わたしはそんな
反応に心を躍らせてしまった。
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