ダニの話(後篇)

 よく犬を山へ連れて行っていたからか、あるいは普段の散歩で、草むらに分け入ったりしたときにくっついたのか、その後も、ダニは犬に何度かついた。家の床の上に、何か、ブドウの粒のような丸っこいものが落ちていて、なんだろうと拾ってみると、血を吸いすぎてひとりでに犬から落ちて、動けなくなっているダニだった。おそらく、それからしばらくして産卵するところだったろうから、ダニにとっては不幸なことだけれども、どこか人目につかないところに落ちていたらと思うとぞっとする。一回の産卵で、2千個から3千個の卵を産むそうだから、想像しただけで体のあちこちがむずむずするようである。
 靴の上を登ってきたダニを払い落とそうとした手元が狂って、力がかかり、ダニの身体がよじれてしまった。つぶれて死んでしまったかなと思ったら、意外にダニは平気そうで、また登ってくる。ダニはひどく薄っぺらくて、つぶれにくく出来ているようである。
 草むらで動物が来るのを待機しているダニには、成長の段階ごとに、幼ダニ、若ダニ、成ダニがいるそうで、ダニに大小があるのは、その成長過程の違いによるものなのかもしれない。それにしても、いつ来るかもわからないえさを待ち続けて、草むらの陰に隠れているのはまったくご苦労なことである。
 とはいえ、その辛抱に私の血で報いることは真っ平御免なので、足に登ってこないようダニにばかり注意を払っていたら、お弁当がすっかりまずくなってしまった。

こちらにダニの画像があります。見たい方はどうぞ。


お知らせ:木曜日まで南紀の方へ行ってまいりますので、ブログはお休みの予定です。
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