香り付き消しゴムとキン肉マン消しゴム

 昨日書いた話に、「香り付き消しゴムの味がするリゾット」がちらと出てきたけれど、小学校の頃は、香り付き消しゴムが女の子のあいだで大人気で、私も御多分に漏れず集めていた。赤やオレンジの小さな星型やハート型で半透明、しかも香り付きの消しゴムのセットを売っているというので、かなり遠くの文房具屋へ、自転車で坂を上って、友達と買いに行ったこともある。だから、お昼を食べに入った店で、香り付き消しゴム風味のリゾットが出てきたときも、あきらかにおかしな味だったのだけれど、味覚、嗅覚のほかに懐かしさという第三の要素が入り混じって、私の脳は「なんとなくおいしい」と判断し、一緒に行ったほかの人は変な顔をして残していたのだけれど、私は全部食べてしまったのだった。
 香り付きだけではなく、面白い形の消しゴムもいろいろと集めていた。野菜の形とか、ペンギンの形、中でも、子供心に一番感心したのは、ハンバーガーショップの商品をかたどった消しゴムで、紙で作ったケースを開けると、中に可愛らしいハンバーガー消しゴムが入っていたり、赤い紙ケースに、黄色いポテト消しゴムが立てられているのであった。
 こういった消しゴムが実用に耐えうるのかというと、字はあまりよく消えない。今となっては、字の消えない消しゴムの存在理由は謎であるが、当時は使うなんてもったいなくて、しまっていた筒型のケースから取り出して並べ、眺めては満足し、また大事に片付けておくだけなので、そんな疑問も浮かばなかった。その後、集めていた消しゴムがどこへ行ったのか、わからない。集めることに興味を失ってから、使うにもあまり役に立たないし、誰か小さな子供にあげてしまったのかもしれない。
 消せない消しゴムという点で徹底しているのは、「キン消し」である。キン肉マンのキャラクターのゴム人形で、一度、ためしに鉛筆で書いた字をキン消しのかかとでこすってみたら、消えるどころかこっすたところが真っ黒になった。キン消しの詰まった箱を見て、父は肌色が気持ち悪いと言っていたが、弟は友達と競い合ってキン消しを集めて、箱の中の肌色の塊はどんどん大きくなった。
 子供の頃、どうしてあんなに消しゴムが魅力的だったのか、不思議である。さすがにいい年の大人になって、多少は自制心があるからすぐには買わないけれど、今は猫グッズを見たら欲しくなるのと、根は一緒なのかもしれない。
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