母の日

 「お母さん」という日本語は、とてもきれいな言葉だと思う。
 「お母さん」と胸の内で呼ぶと、心安らぐような、それでいて、哀しいような気持ちになる。母であることの喜びや悲しみ、優しさのすべてが、「お母さん」という言葉には込められている。
 私も自分の息子に「お母さん」と呼んでもらいたいと思っている。しかし、まだ言葉のよくしゃべれない息子は、私のことを「かかー」と言う。
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 自分たちの母親には、リクエストの品を購入したあとで、夫が私に、「母の日は何が欲しい?」と息子の代理人として、気を使って聞いてくれたけれど、一歳半の息子はまだ訳がわからないだろうから、「わかるようになってからでいいよ」と礼を言って断っておいた。
 しかし母の日当日になって、花屋の前を通ったときに、小さな男の子を連れたお父さんが、カーネーションを一輪だけ買っていくのを見て、訳がわからぬまでも、息子の小さい手が一輪の花を差し出してくれたなら、どんなにうれしいだろうと思い、後悔した。来年は、息子の代理人にぜひお願いしようと思う。
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