跳ねる魚

 前回、うちの金魚のきんちゃんが、金魚鉢から跳ね出してしまったことを書いたけど、魚はなぜ跳ねるのだろうと思う。
 初夏の日の暮れる頃、河原の石畳の縁に座って川風に涼んでいたら、水面から小さな魚が跳ね上がって、沈みかかった太陽を腹に受け銀色に光った。見ていると、川面のあちこちで、同じような小魚が薄紫色の光の中に跳び上がってきらきら光り、不思議な光景だった。
 小学生のときに、海でさんざん泳ぎ回って遊んだあと、砂浜に座って、疲れた身体を夕日に晒していたら、傾く太陽の方向に、遠く大きな魚が飛び跳ねるのが見えた。それは子供心にとてもファンタスティックな情景だった。こんな美しい瞬間を見られるなんて自分は運がいいと思って、夏休みの宿題の絵日記には、その一コマを描いた。
 思い出を振り返ると、魚が飛び跳ねるのは、夕方が多いような気がする。もしかしたら、日が傾くと、光の加減で、魚が水面の向こうまで水が続いているような錯覚に陥るのかしらとか、水の外の世界が見てみたいのかしら、などと勝手に想像したりするが、理由は別にあるらしい。
 調べてみると、魚が飛び跳ねるのは、捕食者に追われているときとか、反対にえさとなる生物を追いかけているときとか、あるいは、からだの表面についた寄生虫を取るためであるという。とすれば、魚は夕方だけではなく、時間帯に関係なく跳ねるのだろう。
 きんちゃんが金魚鉢から跳ね出してしまったのは、朝食の時間だった。もしかしたら、いろいろ災難の多いきんちゃんのことだから、寄生虫がついていたのかもしれない。
また、ぱしゃん、ぱしゃんとやりだしたら、ちょっと注意して見てあげた方がいいかもしれない。
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