猫の寝床事情

 猫は、だいたい一ヶ月くらいごとに、自分の気に入りの寝床を変える傾向にあるというが、みゆちゃんも例外でなく、このあいだまで、いつ見ても寝室の椅子の上で寝ていたのが、しばらくするともうそこにはいなくて、あまり姿が見えないので名前を呼んで探したら、物置部屋のダンボール箱の中からひょいと顔だけ出したりする。
 そして目下のお気に入りは、私のデスクの椅子である。布張りの回転椅子なのだけれど、肌触りがちょうど今の気候にいいのだろう。おまけに、織目の風合いが、市販の麻製の爪とぎに似ている。おかげで、ほかの家具はみゆちゃんの爪とぎ被害から免れているが、この椅子の背もたれは、だいぶ哀れな様相になっている。
 いけないことはいけないと叱っているつもりだが、この椅子での爪とぎは、みゆちゃんが大けがから立ち直った頃にはじめてばりばりとやって、こちらの心情とすれば、ああ、もう爪とぎができるほど元気になったなあと喜ばしく思い、叱りそびれてしまったために、それ以降、いまさら叱ることもできず、黙認状態になってしまっている。
 みゆちゃんが私の椅子の半分以上を使ってのびのびと寝ているから、デスクを使うときは、みゆちゃんの邪魔をしないよう、残りの半分にちょっと腰掛けて作業をするので、非常にやりにくい。
 また、椅子にはみゆちゃんの抜け毛が大量にくっついている。そこに座った息子のズボンのお尻が、みゆちゃんの毛で真っ白になってしまった。そういえば、夫も出勤前に座っていたなと思い出し、急いで、お尻にみゆ毛がついているかもしれないよと、メールを送ったこともあった。ぱりっと背広で決めていても、お尻に猫の毛がびっしりでは、猫好きには受けても、仕事の上で格好がつかない。
 今もみゆちゃんは、私の座るすぐ後ろに、長々と寝そべっている。はやく次のお気に入りの場所を見つけてくれないかなあと思いながら、お尻を痛くして、遠慮しいしいキーボードを叩いている。
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