下鴨神社の御手洗祭

 下鴨神社の御手洗(みたらし)祭へ行った。
 土用の丑の日に、神社の下から湧く水をたたえた御手洗池に足を浸し、献灯して無病息災を祈る、古代の習わしに由来する神事である。
 神社の南側に広がる糺の森を境内に向って抜ける道には、縁日の露店が出て、子供たちが金魚をすくったり、ヨーヨーを吊り上げたりしていた。この糺の森は、古来の植生をそのまま残した貴重な森で、道の両側にすっと伸びた背の高い木々が、緑のトンネルを造っている。
 朱色の鳥居をくぐって、提灯のたくさん吊り下げられた境内に入り、右手、即ち本殿の左手へ行くと、御手洗祭りの受付がある。履物を脱いで、燈明代を収めてろうそくをもらい、ゆるい坂を降りて、そのまま御手洗池に入る。御手洗池の水は地下水であるため冷たくて、土用の暑さに心地よい。底は石が敷きつめられて、深いところでは大人の膝まである。池の脇に置かれた燈明からろうそくに火を分けてもらい、消えないよう、手で覆ってゆっくりと水の中を歩いて行く。池の突き当たりにある社に、灯を奉げる。
 厳かに池を渡って行く年配の人たちを尻目に、子供たちは、皆、腰のあたりまで水に浸かって、大はしゃぎだ。強い日差しの下に、冷たい水の飛沫が、歓声と共に上がる。
 水から上がって、御神水を戴き、心身を払い、清める。
 この日は、午前中に神社を訪れたのだけれど、5年ほど前、暗くなってからお祭に行ったことがあって、提灯の黄色い明かりにぼうっと照らし出された境内や、ろうそくの灯に赤く照らされた人々の顔、小さな燈明の数々が水の上に明かりを映して揺らめく様などが、非常に幻想的であった。夜の御手洗祭は、昼の明るい太陽の下で行われる献灯とはまた趣を異にした魅力があって、私はどちらも好きである。
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