ねこ絵描き岡田千夏のねこまんが、ねこイラスト、時々エッセイ
猫と千夏とエトセトラ
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雨の象

しばらく屋根の下のベンチに座って様子を見ていたけれど止みそうになく、退屈した息子がゾウが見たいと言うので、ベンチを立って、ゾウの檻の前の、松の木の下に雨宿った。
立派な松の木だけれど、針葉樹だから、細い葉のあいだから雨がぽつぽつと落ちてくる。見上げると、普段、雨模様の空が背景ではあまりよく見えない雨の粒が、茂った黒い枝の隙間から、小さなガラスのビーズみたいにつぎつぎと落ちてくるのがきれいだった。
大きな黒いカラスが鳴きながらやってきて、先に雨宿りをしていたハトたちを蹴散らしていった。
アジアゾウの美都は、運動場の砂地を、なにやら鼻で掘っていた。何をしているのだろうと思って見ていたら、突然、のっしのっしと小走りにこちらへ向ってきて、鼻をしならせ何かを投げつけた。たぶん投げたのは落ち葉か何か軽いもので、美都も本気で投げたようではなかったから、こちらまでは届かずに、ゾウと柵のあいだに横たわる堀の中へ落ちていったけれど、この攻撃的な仕草にいささか驚いた。横で赤ちゃんを抱いてゾウを見ていたお母さんも、何メートルか後ろへあとずさった。
ゾウの柵には、「ゾウが鼻水や泥水を飛ばす事があります」という注意書きがされていて、以前にも、ゾウを見に来た4人組の高校生の男の子たちの中の一人が、どういうわけか美都の気に入らなかったらしく、鼻で彼に何かを投げつけているのを見たことがあった。別に高校生たちの態度に悪いところなどなかったのに、その子が近づくたびに、鼻を振り上げるのであった。
今日の美都も、どこか虫の居所が悪かったのかもしれない。
その後も松の木の下で見ていたら、たぶん美都のおもちゃなのだろう、鉄の鎖のついたタイヤを鼻で荒っぽく持ち上げて、地面に放り投げたりしていた。子供の投げ輪か何かのように、美都は軽々と鼻で扱っていたけれど、本当は重たいタイヤである。優しい目のゾウだけれど、怒るとやはり恐ろしいのだろうと思った。
タイヤを投げつけた美都は、鼻を塀の向こうへ伸ばすような素振りをした。
動物園は楽しいけれど、動物たちのそういう姿を見ると、気の毒になる。動物園で生まれた者ならまだ、檻の中の境遇をそれほど憂鬱に思うこともないかもしれないが、美都は、確かどこかのアジアの森からやって来たゾウである。来園して30年ほど経つ今でも、故郷を思い出すことがあるかもしれない。美都の長い鼻は、かなしい感じがした。
ゾウを見てカバを見てホッキョクグマを見て、売店の屋根の下でソフトクリームを食べて、ようやく雨は上がり、午後からは予報どおり青空が広がった。
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