真夏の太陽を思う

 暑い夏と涼しい夏、どちらがよいかと聞かれたら、涼しい夏だと、喉もとまで、答えが出掛かっている。
 今は暑いのが体にこたえるけれど、子供の頃は、暑さなんて気にならなかった。暑いことよりも、夏休みの楽しさ、家族と行く海、山。水泳用具の入ったビニールのかばんをぶらぶらとぶら下げて、友達と一緒に学校のプールへ行く。ゴムぞうりの下で、焼けたアスファルトの表面が、乾いた音を立てる。強い太陽が、風景を白い部分と影の部分とにくっきりと分けて、セミがわんわんと鳴いていて、熱い空気の塊に包まれていた。そんなことは覚えているけれど、暑くてたまらなかったというような記憶はない。
 今でも、覚悟を決めて、いったんエアコンのきいた家の中から、気温が35度とか36度の熱気の中へ出て行くと、ちょっとやけくそ気味なような、それでいて、どこか気持ちがせいせいするような、そんな気分になる。当然、海では砂がやけるような太陽が要る。
 なによりも、お盆が過ぎて、夕暮れ時に、涼しい風がさっと通り過ぎると、もう夏が終わるのだという、寂しい気持ちにいつも襲われるから、過ごしやすい涼しい夏がいいと思う反面、その寂しさを吹き飛ばすくらい、夏が暑くあって欲しいとも思う。
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