坂東眞理子「女性の品格」

 巷には、「国家の品格」、「日本人の品格」、「上司の品格」、「企業の品格」、「弁護士の品格」、と「品格」本があふれている。
 普段、あまりベストセラーは読まないのだけれど、猫の品格について考えてみるきっかけにしようなどと思って、この本を買ってみた。
 で、読んでみたら、内容は非常にまともであるけれど、当たり前のことが述べられているだけなので、品格がどうのこうのというよりも、むしろ常識の本という感じである。タイトルも「現代社会の常識」みたいなほうがしっくり来ると思うのだけれど、しかしまあ、それでは買い手の目をひかないのだろう。
 礼状の書き方とか、電話のかけ方とか、ビジネス上の礼儀を書いたくだりはなるほどと思うけれど、個人商店で買い物をしましょうとか、無料のティッシュはもらってはいけないとか、そこまで口を出すかと、少々おせっかいだと思うようなことまで書いてあって、この本を読んだ人の感想を見ていると、そういうところが、特に主婦層あたりから反発を受けている。スーパーで少しでも安い物を買って、無料のティッシュは必ずもらう節約主婦は、品格がないのかというわけである。
 そういう私生活に首を突っ込むようなこまごましたネタまで書かないと、ある程度の厚さのある一冊の本には仕上がらないのだろうけれど、筆者自身が専業主婦の経験のないキャリアウーマンだろうから、働く女性(または男性)のための、社交上の常識だけにテーマを絞っていたほうが、支持者も多かったかもしれない。
 また、本書で扱われている品格は、「人からよく見えるための品格」であるように思う。個人的には、品格とは人間の内面から染み出してくるようなものだと考えているので、この表面的な品格には少し疑問を感じる。
 そういうこともあって、内容のすべてに賛同できるというわけではないが、ともあれ、常識を知らない人というのは世の中に結構たくさんいると思うので(自分のことを棚に上げるつもりはないです)、こういう本があってもよいと思う。
 ちなみに、猫の品格については、いろいろ考えたあげく、猫は生まれながらにして品格の備わった動物だという、もともと自明であったような結論にたどり着いた。
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