数年前。
そこそこ大きな劇場に出たときのことでした。
私、実は本番前に、
ちょっと変わった発声練習(声出し)をするんです。
とある、超有名劇団さんで使われている、
セリフを全て母音だけでしゃべる、
「母音法」というメソッドがあるのですが、
これを自分流にアレンジしたものを、
本番前の声出しに使います。
例えば「こんにちは」なら「おんいいあ」。
こんな調子で、それも一言ずつ腹筋を使って、
ばかでかい声で、歩きながら、
自分のセリフを最初から最後までしゃべっていきます。
ただ、これ、かなりうるさい上に、
何言ってるか分からないので、
すごく人に迷惑がかかるんですね。
だから、普通はみんな、舞台の上で声を出すのですが、
私は客席でやります。
前に書いたように、舞台上の声は、
マイクを通して楽屋その他、裏に筒抜けなので、
これはいくらなんでも恥ずかしい。
それに、うるさくてとんでもない迷惑になる。
で、また、その時の劇場が、
ゆったりと作られている、とてもいい客席だったので、
最も舞台から遠い、一番後ろの客席スペースで、
「おんいいあ」みたいなのを、やり始めました。
いろんな高さで、いろんな強さで、
繰り返しながら、おあおあやって、
まぁこんなもんかな、という所で楽屋に戻ると、
ん?
みんなの笑顔が、なんか不思議?
「望子さん、お疲れ様です。すんごい頑張ってましたね」
「え?」
「あの、声出しの・・・」
「うっ、聞こえてたの?」
「はい。しっかりと」
「だ、だって、客席の一番奥でやってたのよ!」
「あー、そうなんですか!
いや、舞台には見えないし、どこだろうって、みんなで話してたんです」
え? みんなで、私の姿を、探してた?!
ってことは・・・
<つづく>
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