蚊 帳
縫い物友達の加代子さん 浴衣地のブラウスは何枚もプレゼントでいただいています。
汗かきで 太めの老体には着心地のいい夏の家庭着です。
今日は 今話題の蚊帳の素敵な布巾を持ってきてくれました。
柿渋染めの こだわりの布巾です。
蒸し暑い日本の夏に 蚊帳は欠かせないものでした。
寝る前に蚊帳を張るのは私の役目でした。 長屋暮らしの貧乏家庭の蚊帳は
今思い出しても それなりの蚊帳でした。
母は長女の私に 「蚊帳を買うときは 一回り大きなものを買うんだよ 6畳用
だったら 8畳用がいいね。」と まだ6年生の私の耳元でつぶやいていました。
蚊帳に 入るときの作法は父が担当でした。
正座して 蚊帳と対面し 両手で蚊帳の裾を 二 三回振り 急いでめくり
中に入る。
今思い出しても 鮮明な思い出です。
骨董市で 立派なお金持ちの蚊帳を見たことがあります。
吊り輪には 彫刻が施され ぼかしの入った蚊帳は 見事なものでした。
丈の短い 寝巻は前で紐を結んでいました。
疲れて ぐっすり寝た朝は よだれで蚊帳の緑が顔に移り 登校の時間を気にしながら
母に 蒸しタオルでとってもらっていました。
母も 父も 鬼籍の人となり 蚊帳の話を 聞いてくれる人も 少なくなりました。