日販調べの2017年のベストセラー本(総合)は,佐藤愛子『九十歳。何がめでたい』(小学館)です。雑誌『女性セブン』連載のエッセイ集だそうです。読んだことがないので感想はありませんが,私はかつて『女性セブン』に書評を何度か書かせてもらったことがあるので,その雑誌のエッセイには関心があります。近いうちに読んでみようと思っています。
新書(ノンフィクション)のベストセラーランキングに目を転じてみると,3位に,河合雅司『未来の年表』(講談社現代新書)が入っています。この本は経済を中心とした日本の将来予測をしたものです。話題を呼び,今でも多くの書店で平積みされています。どんな内容かといえば,「人口減少日本でこれから起きること」というサブタイトルがついているように,国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口に基づいて,将来日本社会で何が起きるのかを年表のように記述したものです。例えば,2018年国立大学が倒産の危機へ,2020年女性の2人に1人が50歳以上に,2033年全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる,2040年自治体の半数が消滅の危機にという具合です。
人口の将来推計は,戦争のような非常事態に陥らない限りは,確度の高い予測です。それに基づいて日本社会の変化を論じることは妥当性のある議論です。この本は,日本社会の少子高齢化や人口減少はこれからが本番で,社会の衰退が急速に進むことを予測しています。今後人手不足が恒常化し,あらゆる分野で後継者難になり,インフラや科学技術を維持することはできなくなり,ゴーストタウンが日本中を覆う状況を示唆しています。現在政府は少子化対策を進めていますが,出産の可能性の低い50歳以上の女性が女性人口の過半数を占めるようになると,出生率は上がったとしても,出生数自体は増加することはなく,人口減少には歯止めがかからないといいます。もう手遅れではないかというのです。筆者はこの状況を「静かなる有事」と表現しています。弾丸を使わなくとも,国家が滅びていくというのです。
未来ある学生にはぜひ読んで欲しいと思います。将来,人口減少で,社会が活力を失い,経済が衰退する中で,組織そして社会を背負わなければならなくなるのは,今の学生たちだからです。最近の卒業生や今の4年生たちは,空前の就職状況に沸いてきました。一人でいくつも内定を獲得することができた幸運な状況です。後輩たちもしばらくはその恩恵にあずかることができるでしょう。ただし,これは「静かなる有事」の序曲であるかもしれないのです。幸運は,景気回復のおかげというよりは,少子高齢化に伴う生産年齢人口減少(15~64歳の働き手)のおかげでしょう。生産年齢人口は過去20年で1,000万人も減っています(8,700→7,700万人)。各組織が現状の業務を維持しようとすると,当然人手不足に陥るわけです。人手不足は今後猛烈な勢いで進行する見込みです。人手不足をAIが補うという楽観的な予測もありますが,機械が人間に完全になり替わることができるでしょうか。就職先獲得がつかの間の幸せに終わる可能性があるのです。
併せて読んで欲しい類書に,NHKスペシャル取材班『縮小ニッポンの衝撃』(講談社現代新書)があります。2016年にNHKテレビで放送された番組内容を書き起こしたものです。これは,少子高齢化・人口減少に伴って,今進行しているいくつかの自治体の破綻,衰退,改革のルポです。北海道夕張市の財政破綻,島根県雲南市の住民自治組織などを先進事例として捉えることによって,将来の日本社会全体を覆う「縮小現象」を写し出そうとしています。夕張市の財政破綻のルポはなかなか衝撃的です。ゴーストタウン化が進行し,インフラの維持すらままならなくなる社会の姿を知ることができます。
新書(ノンフィクション)のベストセラーランキングに目を転じてみると,3位に,河合雅司『未来の年表』(講談社現代新書)が入っています。この本は経済を中心とした日本の将来予測をしたものです。話題を呼び,今でも多くの書店で平積みされています。どんな内容かといえば,「人口減少日本でこれから起きること」というサブタイトルがついているように,国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口に基づいて,将来日本社会で何が起きるのかを年表のように記述したものです。例えば,2018年国立大学が倒産の危機へ,2020年女性の2人に1人が50歳以上に,2033年全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる,2040年自治体の半数が消滅の危機にという具合です。
人口の将来推計は,戦争のような非常事態に陥らない限りは,確度の高い予測です。それに基づいて日本社会の変化を論じることは妥当性のある議論です。この本は,日本社会の少子高齢化や人口減少はこれからが本番で,社会の衰退が急速に進むことを予測しています。今後人手不足が恒常化し,あらゆる分野で後継者難になり,インフラや科学技術を維持することはできなくなり,ゴーストタウンが日本中を覆う状況を示唆しています。現在政府は少子化対策を進めていますが,出産の可能性の低い50歳以上の女性が女性人口の過半数を占めるようになると,出生率は上がったとしても,出生数自体は増加することはなく,人口減少には歯止めがかからないといいます。もう手遅れではないかというのです。筆者はこの状況を「静かなる有事」と表現しています。弾丸を使わなくとも,国家が滅びていくというのです。
未来ある学生にはぜひ読んで欲しいと思います。将来,人口減少で,社会が活力を失い,経済が衰退する中で,組織そして社会を背負わなければならなくなるのは,今の学生たちだからです。最近の卒業生や今の4年生たちは,空前の就職状況に沸いてきました。一人でいくつも内定を獲得することができた幸運な状況です。後輩たちもしばらくはその恩恵にあずかることができるでしょう。ただし,これは「静かなる有事」の序曲であるかもしれないのです。幸運は,景気回復のおかげというよりは,少子高齢化に伴う生産年齢人口減少(15~64歳の働き手)のおかげでしょう。生産年齢人口は過去20年で1,000万人も減っています(8,700→7,700万人)。各組織が現状の業務を維持しようとすると,当然人手不足に陥るわけです。人手不足は今後猛烈な勢いで進行する見込みです。人手不足をAIが補うという楽観的な予測もありますが,機械が人間に完全になり替わることができるでしょうか。就職先獲得がつかの間の幸せに終わる可能性があるのです。
併せて読んで欲しい類書に,NHKスペシャル取材班『縮小ニッポンの衝撃』(講談社現代新書)があります。2016年にNHKテレビで放送された番組内容を書き起こしたものです。これは,少子高齢化・人口減少に伴って,今進行しているいくつかの自治体の破綻,衰退,改革のルポです。北海道夕張市の財政破綻,島根県雲南市の住民自治組織などを先進事例として捉えることによって,将来の日本社会全体を覆う「縮小現象」を写し出そうとしています。夕張市の財政破綻のルポはなかなか衝撃的です。ゴーストタウン化が進行し,インフラの維持すらままならなくなる社会の姿を知ることができます。
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