7月の後半から今まで3週間以上猛暑日が続いています。自分の経験上,体温と同じかそれを超える気温がこんなにも長い期間続いたことはありませんでした。8月10日から大学は休暇に入っています。その休暇はもう終わりになりますが,休暇中暑さのため外に出かける気になれず,自宅に閉じこもっていました。
閉じこもって何をしていたかといえば,仕事(書類作成)と読書です。仕事は,昨今大学業界で定着したPDCAサイクルに基づいて反省と改善を図るという,内部質保証に関する報告書の執筆です。現在教務部長・副学長を務めていてそれに伴うものです。企業に倣って大学もPDCAサイクルを回せと上位機関から指示されて,多くの大学はそのような動きを見せています。問題なのは,厳格にPDCAサイクルに基づいて運営可能なのは閉じたシステム(外部環境の影響を受けない状況)だけだということです。大学のように(企業も同じ),開いたシステムとして,常に変動する外部環境(コントロール不可)に対応しなければならない状況下,どこまで実効性のある改善活動になるのか不明なのです。そう思いながらも,PDCAを踏まえて報告書をまとめています。
読書については専門外の本を読んでいました。最近読んだ本はつぎの通り。学生に参考にして欲しく,紹介します。
尾原宏之『「反・東大」の思想史』新潮社。この本は,絶対的存在である東京大学に反発して,存在を確立しようともがいてきた様々な大学の物語を描いています。慶應,早稲田,一橋,京都,同志社など現在名門校として名声を得ている各大学のアイデンティティーの裏には,東大への反発があったことが分かります。そして,実際に様々な反東大の闘争が起きていたことを知ることができます。大学史以外にも,労働運動や右翼思想にも触れています。大学人として,大学史に関心があったので,純粋に面白く読めました。
イザベル・ウィルカーソン『カーストーアメリカに渦巻く不満の根源ー』岩波書店。400頁を超える大著です。数年前アメリカにおいてアフリカ系の人が警官に殺され,それに対してブラック・ライブズ・マター運動が起きた背景をある程度把握することができました。インドのカースト制,ドイツのユダヤ人迫害と対比しながら,アメリカの人種差別の状況を説明しています。歴史上の迫害事件,著者自身の差別の経験などが,気が滅入る記述になっています。民主主義国アメリカの一断面を知ることができます。
三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』集英社。この本は最近の新書のベストセラーです。タイトルと内容に少し齟齬があり,実際の内容は,明治時代から現在に至る読書の在り方の歴史です。各時代のベストセラー(人気の雑誌も含む)を取り上げ,それが生まれた時代背景を解説しています。例えば,自分の学生時代である1980年代では,『サラダ記念日』『窓際のとっとちゃん』『ノルウェイの森』を取り上げ,これらが僕と私の視点の物語であり,コミュニケーション能力が労働市場で重視されたことがその背景にあると指摘しています。
閉じこもって何をしていたかといえば,仕事(書類作成)と読書です。仕事は,昨今大学業界で定着したPDCAサイクルに基づいて反省と改善を図るという,内部質保証に関する報告書の執筆です。現在教務部長・副学長を務めていてそれに伴うものです。企業に倣って大学もPDCAサイクルを回せと上位機関から指示されて,多くの大学はそのような動きを見せています。問題なのは,厳格にPDCAサイクルに基づいて運営可能なのは閉じたシステム(外部環境の影響を受けない状況)だけだということです。大学のように(企業も同じ),開いたシステムとして,常に変動する外部環境(コントロール不可)に対応しなければならない状況下,どこまで実効性のある改善活動になるのか不明なのです。そう思いながらも,PDCAを踏まえて報告書をまとめています。
読書については専門外の本を読んでいました。最近読んだ本はつぎの通り。学生に参考にして欲しく,紹介します。
尾原宏之『「反・東大」の思想史』新潮社。この本は,絶対的存在である東京大学に反発して,存在を確立しようともがいてきた様々な大学の物語を描いています。慶應,早稲田,一橋,京都,同志社など現在名門校として名声を得ている各大学のアイデンティティーの裏には,東大への反発があったことが分かります。そして,実際に様々な反東大の闘争が起きていたことを知ることができます。大学史以外にも,労働運動や右翼思想にも触れています。大学人として,大学史に関心があったので,純粋に面白く読めました。
イザベル・ウィルカーソン『カーストーアメリカに渦巻く不満の根源ー』岩波書店。400頁を超える大著です。数年前アメリカにおいてアフリカ系の人が警官に殺され,それに対してブラック・ライブズ・マター運動が起きた背景をある程度把握することができました。インドのカースト制,ドイツのユダヤ人迫害と対比しながら,アメリカの人種差別の状況を説明しています。歴史上の迫害事件,著者自身の差別の経験などが,気が滅入る記述になっています。民主主義国アメリカの一断面を知ることができます。
三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』集英社。この本は最近の新書のベストセラーです。タイトルと内容に少し齟齬があり,実際の内容は,明治時代から現在に至る読書の在り方の歴史です。各時代のベストセラー(人気の雑誌も含む)を取り上げ,それが生まれた時代背景を解説しています。例えば,自分の学生時代である1980年代では,『サラダ記念日』『窓際のとっとちゃん』『ノルウェイの森』を取り上げ,これらが僕と私の視点の物語であり,コミュニケーション能力が労働市場で重視されたことがその背景にあると指摘しています。