田んぼに水が入り、文字通りの水田の風景が見られるようになりました。
今週末あたりから田植えが本格化するのでしょうか。
水の匂いが風に乗り鼻先まで届く季節がやってきそうです。
この匂いを、私は小さい頃から好きでした。
春なんだという実感を、水の匂いや田植えをする人々の姿、
太陽の光を反射して輝く水田の風景を通して、強く感じたからです。
この季節になると思い出す詩があります。
私が中学生の頃に国語の教科書に載っていた詩だと思うのですが、
草野心平の『たまごたちのいる風景』という詩です。
その一節(繰り返される)を今でも覚えています。※現代仮名遣いで表記します。
みずはぬるみ。
みずはひかり。
あちこちの細長い藻はかすかにゆれる。
ゼラチンの紐はそれぞれ黒い瞳をとじ 親蛙たちは姿をみせない。
流れるともなくみずは流れ。
かわずらを。
ああ雲が動く。
……
水田に映る 春の雲の姿が目に見えるようです。
栗駒山の姿も、雲の向こうの青い空も 水田に映り
遠くの水田は、春の光を反射してきらめいている…
田植えをする人々の姿と一緒に そんな景色が目に浮かんできます。
水の匂いも 春の風と一緒に その景色を包みこんでいます。
蛙の卵たちも そこで働く人々の姿も その景色に命を吹き込むように 春を演出しています。
なつかしい『卵たちのいる風景』が見られるのも もうすぐですね。