昨日の新聞の「記者有論」の中で、仙台支局の小野智美記者が、7日にあった地震の際の避難放送にふれていました。この避難放送については、私もブログの中で、3.11の教訓を生かした放送だと書きましたが、記者は先の震災で大きな被害を受けた被災者の立場から放送内容をとらえなおしていました。
NHKでは、津波警報が出た場合には、(一人でも多くの人に逃げてもらいたい)との思いから「東日本大震災を思い出してください」と呼びかけることを決めていたとのこと。しかし、先の震災を体験した人にとっては、「忘れたくても忘れられないあの日を、もう忘れている人がいるのか……」と心に響く言葉でもあり、あの日の恐怖感や悲しく辛い出来事を「思い出してください」と訴えてくる言葉にもなったようです。
記者は、「逃げねばならないと思わせるために、呼びかけの言葉は工夫したい。ただ被災者の心の内にもっと寄り添い、言葉を吟味できないだろうか」と、提起しています。
津波警報が出されたことで、海の近くにいる人にはすばやく避難してほしいと、私も思いました。同時に、先の震災での悲惨な映像が頭に浮かびました。被災者にとってはさらに生々しい記憶がよみがえってきたことと思います。「思い出してください」と言われなくても、瞬時にあの日の出来事が思い出されたことと思います。
当日の避難放送の声は、緊迫感に満ち、避難する必要性を実感させる説得力がありました。「東日本大震災を思い出してください」の文言を省いても、十分に、(一人でも多くの人に逃げてもらいたい)という思いは、伝わったのではないかと思います。
日々被災者の心の内に寄り添いながら、その声を取材してきた 記者だからこそ 感じることのできた思いを 記事から読み取ることができました。末尾に書かれた「家を失い、家族も失った悲しみと共に生きる日常への思いをはせて、言葉を残したい」の言葉の内に、その思いが込められているようです。
被災地における復興への道は、まだまだ険しい状況にあるようです。仮設住宅や避難先で暮らす人々にとっての心の内にも、あの日の出来事と共に 苦しく辛い思いが在り続けていることと思います。
被災者の心に寄り添いながらどんな言葉を発し、どんな支援ができるのか、改めて自問し、少しでも言動にあらわすことができたらと思います。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます