私は、今の政府の分科会を大変信頼している一人なのですが、これだけは「?」と違和感がありました。
先週の政府分科会で、新型コロナ用のワクチンを入手した際の、ワクチンを打つべき人間の優先順位について議論されたとの報道がなされていました。議論の結果、優先されるべきは、高齢者と基礎疾患保持者となったそうですが、この議論、本当に意味のあるものなのでしょうか?
まず、完璧なワクチンがすぐに出来る可能性は極めて低い。ちなみに、人類の歴史上、完璧なワクチンは1種類しか存在しなくて、それは天然痘に対するワクチンだそうです。通常のワクチンは、せいぜい感染した時の重症化の可能性を抑える程度で、感染をゼロにするものや、副作用がゼロのものは、まず作れないと考えるべき。
そうなると、高齢者や基礎疾患保持者にワクチンを打つ場合、考えなければならないリスクは、ワクチンを打つことでかえって感染を促してしまい、結果として重篤患者を増やしてしまうこと。例えば、高齢者の介護施設で、毎年、季節性インフルエンザのワクチンを注射しているかというと、免疫力が弱っている高齢者にワクチンを打つことは大変慎重な判断が必要であり、むしろネガティブなのが一般的。ワクチンを打つことで、かえって体調を崩して死期を早めるリスクの方が深刻だからです。
政府分科会でのワクチンの優先順位の議論は、「完璧なワクチン」が出来ると信じた上でのものなのでしょうが、そんなものが現実的でないことを、感染症の専門家や医師が多く参加している分科会の場で、誰も異議を唱えなかったことに、私は強い違和感を覚えざるを得ません。