第36期竜王戦七番勝負の第4局は、11月10日(金)11日(土)に北海道小樽市「料亭湯宿 銀鱗荘」で行われ、先手番の藤井聡太八冠が129手で快勝。対戦成績を4勝0敗として、竜王位の防衛に成功いたしました。
それにしても、第1局から第4局まで、内容面で見ても、藤井聡太八冠が圧倒していたと言わざるを得ず、伊藤匠七段としては悔いの残る七番勝負となってしまいました。
挑戦者を決めるトーナメントにおいて、A級棋士の広瀬章人八段、稲葉陽八段、そして何と言っても、決勝戦で永瀬拓矢九段に2連勝で下した時の勢いが、この七番勝負では全く消えておりました。伊藤匠七段に何が起きていたのでしょうか?
もちろん、経験も実績も、明らかに藤井聡太八冠が圧倒しており、そのとおりに勝負が決まった、と言えなくもありませんが、挑戦者決定トーナメントの時の伊藤匠七段の将棋には、新たな時代を予感させる特別な輝きがありました。特に、永瀬拓矢九段に連勝した時の将棋の内容は、藤井聡太八冠の手筋にも匹敵するレベルの高さがあったと思います。
その輝きが、なぜ竜王戦七番勝負では消えてしまったのでしょうか?
第1には、日頃の研究成果の「貯金」を、挑戦者決定トーナメントにて、使い果たしてしまっていたことが考えられます。永瀬九段を破ったあの時点で、すでに「貯金」が残っていなかった。
第2には、タイトル戦における藤井聡太八冠が打ち出してくる特別な手筋に対する研究が不足していたことも考えられます。もちろん、藤井聡太八冠にしても、直前まで王座戦五番勝負に集中していましたから、伊藤匠七段の研究は十分に行われていなかったとは思いますが、双方が同様の準備状態であるならば、経験と実績に勝る藤井聡太八冠が圧倒的に有利になると言えます。
これだけ、内容面で圧倒されてしまうと、上記のような状況だったのではないかと、想像せざるを得ません。
しかしながら、伊藤匠七段が、この敗戦から学ぶことは多かったはず。捲土重来、次はぜひ、十分な準備を整えて、藤井聡太八冠を打ち破るような将棋をみせて欲しいと期待しております。