駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

後期高齢者と老人

2008年08月02日 | 世の中
 「後期高齢者と海」と書き換えればヘミングウェイは絶句、いや怒り出すかな。The Old Man(老人)と言う言葉を思い浮かべなければ、The Old Man and The Sea(老人と海)という作品は生まれなかっただろう。老人と言う言葉の意味と響きが喚起するものに呼応してヘミングウェイの心の中に物語が紡ぎ出されたと想像する。
 言葉の持つ不思議な力、言霊と言われたりするが、はあるがままにしておいて欲しい。浅薄に言葉を弄くると、反作用で世界が歪んでしまう。
 痴呆や老人とゆう言葉に含まれる陰のイメージが、政策のもたらす痛みを連想させるのを覆い隠すために、認知や後期高齢者に置き換えるのは、その場しのぎで副作用が出てくる。痴呆や老人とゆう言葉の豊かな感興が事務的あるいは科学的な用語に相応しくないために、他の用語を用いるのは妥当だと思うが。
 入閣した与謝野さんが言われるようにおいしそうな表現や妥協の政策でなく、都合の悪そうでも正確な表現と厳しい政策を実行しなければ困難な今の時代を生き延びられそうにない。市井の臨床医として、常々善と悪、賢と愚は綯い交ぜに分布して鬩ぎ合っているのを身にしみて感じているが、両者の差は本当に紙一重で、辛くも僅かに善賢組が勝ち越しているのが現実のように思う。口に苦くても良薬を飲みたい。果たして、改造した福田内閣に良薬がつくれるだろうか?。
 とまれ、町医者は正直な現場の声を書いて、医療政策の評価に供したい。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする