駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

ロンパリ現象

2008年08月27日 | 診療
 ロンパリとはロンドンとパリの略ですが、二都物語ではありません。誰が言い出したのか、やぶにらみ(斜視)のしゃれた?表現です。もちろん、ロンドン、ベルリンと離れ過ぎていては医療の対象ですが、僅かな斜視はなかなか色っぽく、どきりとさせられることもあります、たいてい美女が見つめたのは隣の男でがっかりさせられるのですが。
 医療の世界にロンパリ診断と呼ばれる現象があります。肺癌や胃癌の勉強会で「先生、凄いね、よくこんな早期の病変見付けたね」。「いや、ロンパリ」。「何だ、やぶにらみか」。ということが時々あります。
 胸部写真で異常陰影を肺癌かと思いCT検査をしたら肺炎の跡で、横に小豆大の早期肺癌が見付かった。あるいは胃透視で胃ポリープを見つけ胃カメラの検査をしたら奥に硬貨大の早期胃癌が見つかったというようことは珍しくなく、これを我々はやぶにらみ診断と言ったりしています。視線(検査)の方向と見ていた物(見つかった病気)が違っているところから流用されるようになったと思いますが、やぶ医が胃炎と睨んだのが実は早期胃癌と云う怪我の功名から来た可能性もあります。 
 似たような現象に痛む場所が通常と違っており、診断に手こずる場合があります。例えば胆石胆嚢炎は普通は鳩尾から右季肋部が痛むのですが、左季肋部が痛むと訴えたり、回盲部が痛いと訴える患者さんが時々おられます。痛む場所によって、考える病気の順序が違いますので、診断が遅れることがあります。しかしまあ、手遅れになることは経験のある医者ならまずありません。
 医療の現場では図らずもこうしたことがあるのですが、交渉や勝負では、意図的なロンパリもあるようですので油断めさるなと申し上げましょう。
 
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丸の内の変貌

2008年08月27日 | 
 年に数回上京する。仕事がらみのことが多いので、さほど歩き回る時間はないが、東京駅周辺はよく見て回る。この5,6年で、ちょっと時間がある時、出歩くのは八重洲から丸の内側に変わった。オアゾ丸善から新丸ビル、丸ビル、東京フォーラムまで地下街があり。地上へ出て足を伸ばせば有楽町まで近代的なビルと瀟洒な店が続く。
 先日の会合には外国からの参加者もあり、何人かと少し話をした。妻が東京の印象を聞くとカルフォルニアからのご夫婦は異口同音に「ビューティフル」。と言う。20年前ならちょっと違和感があっただろうが、今はそうかもしれないと首肯できる。
 富士山は美しいがそれは遠景。山肌は決して美しいとは言えない。市街地の美しさは富士山とは違い、眺めてよりも歩き回って感じ取られるもののようだ。おそらくビューティフルの印象に清潔感の占める割合が大きいのではと思う。イーストリバーに映るニューヨークの街並みや凱旋門へ続くシャンゼリゼ通りは見渡せば美しいけれど、歩き回れば清潔な東京がビューティフルなのかもしれない。
 例えば、確かに丸の内の清潔で整った近代的な街並みは美しい。しかるに21世紀に皇居が垣間見える紛れもない東京に出現したこの和のかけらもない街並みに、果たして我々が遠い昔から受け継いできた感性が生きているのだろうか。と妙なことを思った。
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