駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

ノーノーカントリー

2009年07月10日 | 映画
 衛星放送で「ノーカントリー」を観た。2007年アカデミー監督賞助演男優賞などを受賞している作品で、暴力描写で話題になった。
 何というか無機質の砂漠の西部に相応しい乾いた映像に、不気味で変質的な暴力が染み渡る。シガーという殺し屋が出てくるが、此奴は本当は殺し屋ではなく死に神なのだと思う。ノーカントリーのノーはきっとノーマーシーほどの意味ではないかと思われるのだが、どうもこの殺し屋、悪魔も逃げ出す薄気味悪さで迫り来る。その執拗さ理不尽さは常人の感覚を超えている。見終わった後の何とも嫌な後味、ビューティフルの反対は何というのだろう。ダーティとはちょっと違う、ナースティでインコンプリートな感じとでも言うのだろうか。
 勧善懲悪ハッピーエンドでないが、いかにもアメリカ映画だ。どういう意味と聞かれても困るが、まあ荒削りの山が高いと荒削りの谷も深いと言ったほどの意味だ。見ていて何でこんなことにと思うが、人間はお前が考えているよりも不可思議な存在で、いつか思いもよらぬ理不尽に遭遇するのだとでも言いたいのだろうか。
 マッカーシの原作でコーエンという兄弟の作品だそうだ。マッカーシーとコーエンと聞けば欧米人でなくても、そうかとピンと来る苗字だが、そのことがこの作品の色調に何か影響を与えているのだろうか。
 映画解説とも違う妙な感想文になった。こういう映画はお勧めとかお勧めでないとか言う映画ではない。見るかどうか、ご自分でお決め下さい。
コメント
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