昨夜は高血圧の講演会を聞き行った。日本人の成人の三人に一人は高血圧といわれる時代になりました。肥満と塩分摂取過多が主因ですと始められた。これは私も承知している医者の常識。
塩分は一日6g以下にしたいというのが高血圧専門家の指導指針なのだが、なかなか薄味では我慢できない人が多く、平均すると11g/日くらい摂っている。6gというとラーメン一杯食べたらそれでおしまい。勿論、薄味と聞いてラーメンのスープを薄めても、全部飲んでは同じ摂取量で駄目である。薄めて、しかも半分残さなければ、塩分摂取量は減らない。あるいは名残り惜しくても、親父に嫌な顔をされても、スープはたっぶり残すことだ。それではラーメンを食べた気がせんという人が大方だろうが。
世界にはいろんな民族というか生活があって、勇猛なケニアのマサイ族などは一日の塩分摂取量が3g以下という。そのため、彼らには高血圧の人は居ないと言われる。つまり一日塩3gの薄味で暮らせば高血圧にならないで済むというわけだ。外来で薄味を勧めると、「儂らは身体使うし、塩気が無いと働けん」。と言われるがそれは習慣的感覚で(大量に汗をかけば別)、マサイの男は碌に塩分を摂っていなくても炎天下、槍で猛獣を倒す元気がある。
但し、マサイ族の塩味の薄い食事が旨いかと聞かれると、これは不味いのだそうである。マサイ族には子供の時から食べているから旨いのだろうと思ったらやはり不味いらしい。マサイの人は生きるために食べているのである。正直、食べるために生きている私などには6g/日の塩分制限は難しいなあと思いながら講演を聴き終えた。
例のごとく、情報交換会と称して講演会後立食パーティがあった。ちょっと聞き漏らしたことがあったので、講師の教授の脇に行くと、教授は寿司にたっぷり醤油を浸けて、今まさに食べんとしておられる。別に睨んだつもりはなかったのだが「いやあ、私はどうも醤油がないと」。と早速言い訳をされる。どっかで聞いたせりふだ。「ああ、そうですね」。と言いながら、演台で見えなかった貫禄の胴回りにも気付いた。なんだかどうも説得力に欠けるなあ。
*さてお立ち会い。私は江戸っ子ではないがざる蕎麦の汁は半分も付ければ十分、三分の一でも美味しく食べられる。これは本当。どっぷりつけなければ食べられないとしたら、その蕎麦は出来が悪い。寿司も同じ、醤油をたっぷり付けないと美味しくない寿司は仕度と握りがもう一つなのだと思う。