駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

薬効の差を感知することが出来るか

2016年05月12日 | 医療

                             

 毎年いくつかの新薬がでる。この数年の間に糖尿病で素晴らしい新薬が二つ出た。それはDPP4阻害薬とGLP1作動薬だ。先にDPP4阻害薬が発売された。売る方も使う方も最初はどれほどのものかと思っていたのだが、期待以上の効果と使い易さ(体重を増やさない、低血糖を起こしにくい)に、糖尿病治療は一変といっても大げさでないほど変わった。当然、売れ行きは物凄く、薬品メーカーの目の色が変わった。同種同効薬八種がくんずほぐれつ入り乱れての売り込みで、説明というか宣伝を聞いている方は何が何だかよくわからない状態になってしまっている。

 十数年前に出た高血圧の新薬ARBの時には加熱する売り込みに釣られ?、結局ほとんどすべての同種同効薬を使う羽目になってしまった。メーカーやメーカーお抱え?の専門家の話では細かい差があるということで、なるほどとどんどん採用してきたが、正直なところ十分な使い分けはできていない。中にはこれとあれとは違うなあと感じるものもあるが、高々十数例の症例で感じられる差が、本当に意味のあるものかどうかは難しい。どうしても何百例何千例でのデータや、専門家の意見を参考にせざるを得ない。これは臨床医の性なのだが、少しでも良い治療をしたいという気持ちが良いといわれるものに走らせてしまう。

 今のところDPP4阻害薬は五種類に抑え?ている。果たしてGLP1作動薬は現在2種類を採用しているが、最終的に何種類を使うことになるか不明だ。薬には使い心地というものがあり、それは臨床医の大きな財産で、あまりに多種類の同効薬を採用するとそうした感覚が形成できなくなってしまう。勿論、多症例でのデータや専門家の意見も参考にするわけで、どの新薬を採用するかは売り込む方も大変かもしれないが、採用する方には本当に難しい問題なのだ。

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