駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

デイケアにも牢名主?

2016年05月28日 | 世の中

           

 牢名主というのが居たそうだ。今も似たようなのが居るかどうか、壁の向こうのことには詳しくないのでよく知らない。刑務医務官という仕事があるらしく、そういう仕事に就けば向こう側が覗けるかもしれない。待遇は悪くないようだが、さほど人気のある仕事ではないようで、医師会報で時々募集されている。数か月ならともかく、定職としては食指が動かない。

 人間には群れる習性があり、集まると自然発生的に組織と序列が作られる。壁の向こうでも二重バツ三重バツに悪いのが親分に伸し上がり、牢内の序列が出来、新入りを虐めていたらしい。

 そこへ行くとデイサービスは好々爺好々婆が集まるはずの所だから、親分は居ないはずだが、そうばかりでもないらしい。Yさんはもう十五年ばかり通院しているお婆さん、年女だと苦笑いしていたから御年84歳になる。だんだん腰が曲がり、杖を使うようになったが口は達者で大声で話される。勝気なせいか知り合いが多く、待合室ではいつも座頭となっておしゃべりをしてゆかれる。娘さんの勧め嫁さんの願いもあって、数か月前からデイサービスへ通い始めた。デイサービスは嫌がるお年寄りもおられ、通わせるのに苦労することもあるが、Yさんはゲームや体操が面白いようで、欠かさず通っている様子だ。先日デイはどうですかと聞いたら、威張っているのが居ると憮然として答えられた。すぐ、なあに私も負けちゃいないよと強気の発言が続いた。

 牢名主のようなことはないだろうが、デイのようなところでも先輩風が吹いて多少の波が立っているらしい。ああそうとだけ答え、負けないでという言葉は飲み込んだ。

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