駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

一見さんもお断りしません

2016年08月26日 | 診療

        

 一見さんお断りのきちんとした意味は知らないが、医院でも初診にはいろいろ気を遣う。勿論、どんな病気かわからないと言うこともあるが、それには十分な知識と経験があるので何が来てもさほど困らない、それよりもどんな人かわからないと言うことが一番の問題なのだ。大体二十人に一人くらい常識に乏しい人が居り、二百人に一人くらい常識皆無のとんでもない人が混じっている。

 おかしな人だと思うとそれが相手に伝わり、反発を買うのが通例なので、さりげなく観察することにしている。表情、服装、言葉遣いは大いに参考になるが、住所も参考になる。

 先日健康診断で受診した五十代後半の女性、表情、服装、言葉遣いにはさほど問題はないのだが、住所が市内の反対側で10キロ近く離れている。心の片隅でおかしいなあと思いながら一通り診察する。どうも血圧が高い、根ほり葉ほり聞くと高血圧症でF医院に通院していると言う。なんで当院に来たのと聞くと友達が近くに居るのでちょっとと答える、まさか健康診断に良い医院などという評判があるとは思えないが。どんな薬を飲んでいると聞いてもお薬手帳は忘れた、赤い薬と言うばかり、いくつ飲んでいるかには一つと言う。

 高血圧症で通院中きちんと治療することと付記したのだが、病歴というのは話してくれないとまず分からない。健康診断は通院してる医院の方がきちんとわかっているから、これからはそこで書いてもらってくださいとお話ししたのだが、そそくさと帰って行った。

 看護師が帰り際さりげなく聞いたら実は薬は三種類くらい飲んでいるようで、高血圧症以外の病気も持っていそうだった。

 これは最前線で実務に携わる医師の感想で、経営者の院長はとにかく初診大好きなのだ。昔出た診療部長会議で、今月は患者数が若干減っているが初診が多いから大丈夫とよく聞かされた。はたしてどんなものか。

コメント
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