駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

躓かないように心の中に杖を

2016年12月23日 | 町医者診言

           

 毎年のことながら陛下のお誕生日を祝いながら、二十三日はどうも困るなあと思ってしまう。まあ、せっかくの休日、今日は好天ぶつぶつ言わず休みたい。

 六十五歳で前期高齢者、この辺りの年齢になるとかなりの個人差はあるが、先達としてひとつ申し上げたい。それは心の中に杖を持つこと。六十代後半ではまだ階段を駆け上る元気あるの人も居るだろう。躓いて転ぶことなどないと自信のおありの方も多いかもしれない。

 しかし、体勢を立て直して転びこそしないが躓かない人は殆ど居ないと思う。二十代三十代と違い、躓いた時体勢を立て直すのが難しくなっているはずだ。手に杖を持つ必要はないが、心の中に杖を持って、躓くのを防ぐのが実は賢明だと申し上げる。躓いた時、転ばない反射神経を養成するのは大事ではあるが、躓かないように用心する方がうんと実行しやすく効果もある。

 冬になると患者数が殖え、午前の診療では一時間に十五人以上診なければならない。定時に終えるには、テンポ良く流れるように診察しなければならない。勿論、重症や訴えの長たらしい患者さんが混じってくるが、流れを乱されなければさほどの時間を取らない。ところが手順前後あるいは予測を間違えると蹈鞴を踏み、躓くと大渋滞を起こし、終診が三十分四十五分と遅れ、悪循環に陥ってしまう。適切な予測と手順で、難症例を診てゆく心の中の杖が必要になる。まあこれは一つの喩えなのだが、何事に依らず、躓かぬ先の心の中の杖が高齢者には必要と思う。馬齢と謙遜される方も、年を取っていれば数多くの失敗から学んでいるはず、心の中の杖を使えると思う。

コメント
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