川本三郎さんが「波」10月号に池内紀さんの最後の著書「ヒトラーの時代、・・」に寄せて追悼記を書かれている。私は池内紀さんの良い読者ではないが良い視聴者ではあったのでまだお若かったのにと驚き残念な気がしていた。最後の著書に込められたものを川本さんを通して少し理解でき、いくらか気持ちが落ち着いた。いずれ人は死ぬものだし、思いのたけを込めた終止符を打って逝かれたのは見事と申し上げても失礼ではないと思う。
池内さんの話し方と声の質は柔らかく独特で、今一度日曜喫茶室でマスターのはかま満緒さんとの会話を聞いてみたい。川本さんも飄逸とは言えないかもしれないが芯は強くきちんと筋が通っておられるところは池内さんと似ているように思う。そのせいか深く理解し共感のある評論になっているようだ。私の読解力など不十分で何度も読み返して味わいたいと思う。できれば「ヒトラーの時代・・」も読んでみたいが、こちらは読み切れるか自信がない。最近はどうしても旅行記など軽いもの志向になっているからだ。でもまあ、書棚には置いてみたい。