駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

演技力の問題

2019年12月08日 | 医療

            

 

 今年79歳のS氏、事故の後遺症で左手が不自由だが、認知は軽微で何とか自力で通院できる。奥さんは脳梗塞で寝たきりだったのだが、半年前に入所し今は独り暮らしだ。介護の申請を希望され、医師の意見書を書いた。先日受診して要介護2になったという。えっ要支援の2じゃないのと言ったら、要介護だという。驚いたのを見て、動けない振りをしないと介護がもらえないぞと息子に指導され、歩けない演技をしたという。それは困るなあと看護師と顔を見合せたのだが、「いやあ、介護をしてもらうと元気が出る。飯も旨くなった」と嬉しそうで、注意することは出来なかった。確かに体重が1.5kg増え顔色も良く元気そうで、人と話をして世話を焼いて貰うことがSさんには薬以上の効果があるようだった。

 私の医師の意見書は正直に書いてあるので、意見書からは要支援の2くらいのはずだが、認定審査は調査員の方を重要視したらしい。演技を見破る調査員も居るはずだが、こうした演技派は地域差はあっても全国何処にも居るんだろうなと思った。

 ちなみに、Sさんは材木工場の従業員だった人で演劇の経験があるわけではない。

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