何かを集めるという趣味はない。子供の時、昆虫採集を始めかけたが、ある夏油蝉をおもしろがって何十匹と捕って、気がついたら箱一杯の死骸に、悪いことをしたと思ってやめてしまった。
コレクションの趣味はないといっても絵は六十枚くらい持っている。十五年くらい前から求め始め、年に二枚程度のペースだから、購入したものが三十枚前後、自分の作品がおよそ二十枚、父が遺したものが数枚、戴いたものが数枚ある。
なぜ絵を買うか。それは手許において鑑賞したいからだ。私には所有によって、絵の見え方が変わるということはない気がしている。繰り返し見ている内に飽きるものもあるが、そうした作品は少ない。絵の鑑賞には見る方の体調や気分が関わるから、殆どの作品に新たな発見や印象があり、飽きることはない。
そこそこの値段の絵も数枚あるが、値段と絵の魅力は殆ど無関係だ。絵の値段は画商や制作者が付けるもので、希少価値や流通性が関係しており、私にはあまり意味が無い。勿論、高価なものは買えないという障壁にはなる。
どちらかと言えば油絵が好きだ。水彩もいいが、水彩画は対峙するものでなく、それこそ風景のように眺める鑑賞が合っていると思う。どういうわけか油絵には、暫く見つめる鑑賞が向いている作品が多い気がする。その存在感に惹かれる。