駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

日本の社会保障の行方

2015年05月16日 | 小考

              

 十分な知識はないが、日本ほど社会保障の行き届いた国はないだろう。共産国は軒並み総崩れ、現在も共産国の中国ベトナムキューバは名ばかりで、実態は全然別物になっている。日本よりも弱肉強食で格差がありそうだ。所謂先進国も日本ほどきめ細かい行政サービスは出来ていないと思う。

  このたび政府肝いりの地域医療福祉充実の一環として地域ケア会議というのができ、先日初めて開催された。介護担当者会議との重なりも多そうで何をしようとしているのかよく分からない所もあるのだが、上意下達で市役所が動き地域包括支援センターが中心となって、六無齋(親も無し妻無し子無し板木無し金も無けれど死にたくも無し)の救助を相談した。七職種(家主を含む)十一人で一時間の会議であった。

 対象となった方は七十代半ば、大変失礼な忖度ではあるが、もとより林子平ほどの覚悟もなく、飲んだくれで糖尿病で認知が始まった独り暮らし。となれば自立にはほど遠く、孤独死の危険もある。

 どうすればまともな三食が食べられ、酒が止められ(幸いこれは止められそう)、きちんと薬が飲めるかというのが議題である。週四日のデイサービスで週四回は確実に服薬が出来るとして、残る三日はと家主やケアマネの顔を伺われても、声かけぐらいは出来ますがと言う返事になる。資産管理の係と相談しながら改善策を立てることが出来た。あーっと、最後に肝腎なことを忘れましたが、ご本人の意思はどうなんでしょうと言う司会者の言葉で会議を終えた。

 六無齋などと対象の方や林子平に失礼な書き方をしたが、本当のことは下意上達しなければならない。そうでないと一律非効率な行政が税金を使って行われることになる。帰院して看護師達に話をすれば、やさしい看護師でさえそこまでやるんですかと呟いた。痒いところに手が届く社会保障が上手く機能するには、受け手にご近所や周りに迷惑を掛けたくないという心性が欠かせず、頼りっぱなしの人達ばかりではうまくゆかないと思う。

 「そんな奴は野垂れ死にすればいい」と「格差社会の犠牲者を手厚く保護しなければという声の鬩ぎ合いは現実を見ていない発言の応酬のように最前線からは見える。

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