「目の見えない人は世界をどう見ているのか」伊藤亜紗 光文社新書を読んだ。
目の見える人が実は良く見えていないことを教えてくれる本でもあった。目の見えない人は言われてみればそうかと気付くのだが、目の見える人よりも少ない情報で世界を見ている。しかしそれが必ずしも良く理解できていないことを意味するわけではない。例えば目の見える人は前後や表裏を意識区別するために、全体像を見失うことがあるが目の見えない人は全体をひっくるめて把握できている。
目の見えない人を視覚障害者と表現するので研究の対象にしにくい雰囲気はあったと思うが、伊藤さんは踏み込んでインタービューと協働体験を本にまとめられた。目の見える人間は百聞は一見に如かずはそのとおりだなと受け取りがちだが、実は抜け落ちているところがあり、目をつむっただけでは目の見えない人の理解している世界は分からないのを教えられた。
伊藤亜紗さんはこうした研究をされているせいか偏りの少ない広い視野を持った研究者で貴重な人と思う。