雨のせいで朝七時でも暗い。雨の大晦日になった、以前にも雨の大晦日は経験しているはずだが、いつのことだったか思い出せない。思い出そうとすると半世紀以上昔のことばかり脳裏に浮かんでくる。
生まれ育った所と違う土地に根を下ろして四十数年、人生で一番長い期間を過ごしているのに、いまだに年末年始は故郷の記憶が大きい。この世に生を受けて幼少年期を過ごした土地の記憶は特別のようだ。いつも初詣は夜が明けてから近くの天満宮に行っていたのだが、中学生になり真夜中一時間歩いて友達と伊奈波神社まで初詣に行ったことがあった。寒く森閑とした夜の街をうっすら覚えている。
雨が上がってきた。元旦は晴れるようだ。少しづつ馴染んできた近くの神社に初詣に行くことになるだろう。
いつも大晦日になると去年今年貫く棒の如きものという虚子の句を思い出して成程と思うのだが今年はちょっと違う感じがしている。多分それは繫がっては困るものが貫こうとしているからだろう。